子どもの発熱|原因と観察方法・手当について解説

子どものバイタルサイン(生命兆候)のなかでもとくに変動が大きく、受診のきっかけとなるのが発熱。子どもの発熱には、原因となる疾患が多様にあります。発熱中の観察や看護によって、疾患の発見が遅れたり、発熱後の体力の回復や経過に変化が生じたりすることもあるのです。今回は、子どもが発熱する原因や観察の方法、対処法などについて詳しくお伝えします。

1. 子どもの体温の特徴

1) 成人よりも高い体温
子どもは成人よりも新陳代謝が盛んであるため、体温は0.5℃~1℃ほど高めです。月齢が低いほど体温は高くなり、36.5~37.4度が平熱となることもあります。新生児では、啼泣により呼吸が速迫したり運動が活発になったりすることでも体温が上昇します。

日内変動もあり、変動差は0.5~0.8℃です。午前中よりも午後にかけて体温は上昇する傾向にあります。代謝には個人差もあるため、同学年すべての子どもが同じ体温ではありません。日頃から子どもの健常時の体温について把握し、発熱した時との違いを比較することが重要です。

健常時の子どもの体温

正常範囲(℃) 平均値(℃)
新生児 36.7~37.5 37.1
乳 児 36.8~37.3 37.1
幼 児 36.6~37.3 37.0
学 童 36.5~37.5 37.0

2) 子どもの体温は変わりやすい
子どもの体温は月齢が低いほど不安定で、出産後すぐの新生児はとくに不安定であり、生後3か月以降になると徐々に体温は安定してきます。

また、子どもが発熱した場合には39.℃、40℃など容易に高熱が出ることもあります。理由は、体温中枢が未成熟だからです。

体温の産生には基礎代謝・運動代謝・アドレナリンや甲状腺ホルモンが影響し、体温の放散には輻射・伝道・蒸発・対流がかかわっています。体温の産生と放散のバランスをつかさどるのが延髄の視床下部にある体温中枢です。体温中枢により体温は正常に保たれているのですが、子どもは体温中枢が未熟なために変動が起こりやすいのです。子どもの体温には、以下のような特徴があります。

  • ・ 体重当たりの対表面積が大きく、環境からの影響を受けやすい
  • ・ 体重当たりの熱産生量が多い
  • ・ 発汗機能が不十分
  • ・ 自律神経が発達途上であり、体の深部から体表面への熱運搬機能が未熟
  • ・ 低月齢の子どもは、自分で衣服などによる体温調節ができない

子どもの体温が環境の影響を受けやすいと知っておくと、発熱原因を知る手立てになるでしょう。

2. 子どもが発熱する原因

1) 子どもの発熱で考えられる疾患
子どもの発熱原因には、以下のようなものが考えられます。

原因 具体的な疾患例
感染性疾患 上気道炎・インフルエンザ・副鼻腔炎・麻疹・風疹・蜂窩織炎・肺炎・咽頭部膿瘍・骨髄炎・心筋炎・髄膜炎・脳炎・中耳炎・頸部リンパ節炎・尿
非感染性疾患 川崎病・リウマチ熱・甲状腺機能亢進症・急性中毒・悪性腫瘍・白血病・熱中症・脱水・予防接種後の発熱・うつ熱・菊池病
不明熱 古典的不明熱・医療関連型不明熱・免疫不全型不明熱・HIV関連型不明熱

上記の分類には入らない、いわゆる「知恵熱」と呼ばれる発熱は、子どもの知恵がつき始める生後6か月~8か月頃の発熱のことを指しており、多くの原因は突発性発疹などの感染症が原因だと考えられています。「知恵を使ったからおこる発熱」ではありません。

また、学童期以降における子どもの不明熱には、心因性不明熱かと疑われるケースもあります。問診や採血やレントゲンなど一通りの検査で発熱の原因となる器質的な疾患がなく、登校や部活等がストレスとなり発熱するものです。学校活動などを休息すると解熱する傾向があり、発達障害やその他の心身症との併存率が高い傾向にあります。

2) とくに多い感染症による発熱
感染症による発熱には、意味があります。体温が上がると、サイトカインという免疫細胞の働きが活発になります。感染の原因である体内にとどまるウィルスや細菌を死滅させようとしているのです。よって、子どもが発熱していても、機嫌がよかったり、食欲があったりするなど全身状態が良好であれば、無理に解熱させる必要はありません。

子どもの発熱で最も多いのが感染性の発熱であり、小児科受診目的でも最も多くなっています。子ども全体の発熱原因として咽頭炎・扁桃腺肥大・風邪症候群など多数あります。が、乳児期に初めての発熱の原因として罹患者が多いのは突発性発疹です。

突発性発疹の原因はヒトヘルペスウィルスへの感染で、38℃程度の発熱が3日ほど続き、解熱とともに体幹や顔面、四肢に発疹が出現。随伴症状に下痢やリンパ節腫脹が出現することはあります。が、多くは発熱と発疹のみで、数日間で軽快します。ごくまれに脳炎など重篤な合併症を併発するケースも見られます。

3. 発熱時に観察すべきこと

1) 子どもの発熱時に観察が重要な理由
バイタルサインとして数字で現れるもの、全身状態として見た目に現れるものの観察が重要なのは、子どもは自分の体調の悪さや辛さなど、主訴をうまく伝えられないためです。とくに月齢が低い新生児や乳児は、言葉でコミュニケーションが取れません。また、幼児や小学校低学年など会話が可能な子どもであっても、自分の訴えを正確に言葉で伝えることは困難です。大人が観察して子どもの症状に気づく必要があるのです。

2) 体温・体温以外のバイタルサインや全身状態
発熱とは平常時よりも体温が1℃高い状態であり、37.5℃以上の状態をいいます。さらに、38℃未満を微熱、38℃以上を発熱といいます。発熱時には健常時との体温差、日内変動の程度などを把握する必要があるでしょう。熱型の把握が診断の手掛かりとなることもあります。

体温が上昇すると心拍や呼吸数は増加する傾向にありますが、年齢ごとの標準偏差を超える場合は敗血症など重篤な状態が隠れている場合もあります。

3) 機嫌や顔色
発熱があっても機嫌よく遊んでいたり、顔色が良好であったりする場合は、心配のないことが多いのです。反対に顔色は不良で活気がなく、動きが少ない場合は体力の低下があり、発熱が重篤な疾患のサインである危険性もあります。時間経過とともに状態の悪化がないか、注意深く観察する必要があるでしょう。

4) 食欲や水分出納バランス
発熱があっても食欲がある場合(乳児の場合は哺乳が良好な場合)は、今後の経過は良好に進むことが予測できます。一方で食欲がなく水分摂取も不良で、尿量が減少している場合は発熱により脱水に傾いている危険性があります。

脱水は発熱を悪化させるリスクがあるだけでなく、放置すれば体の血液量が減少してショックになったり、電解質バランスの崩れなどを起こす危険性もある病態です。目の上の落ちくぼみ、皮膚の乾燥・ツルゴール性の低下※・尿の色が濃い等も脱水の症状です(1歳未満の乳児の場合は大泉門の陥凹)。経口摂取が困難な場合は点滴の必要性も出てくるでしょう。逆に点滴をするだけで、全身状態の改善につながりやすいので、医療機関の受診が有効です。

※ ツルゴールとは皮膚の張りのこと。調べ方は、手の甲の皮膚を軽くつまみ、元に戻る時間を調べます。戻るのに2秒以上かかる場合はツルゴール性が低下、つまり脱水の危険性があると評価できます。

5) 発熱までのエピソード
発熱に至るまでどの様な経過をたどったのか、周囲で発熱している子どもはいるのかなど背景を確認することも必要です。たとえば以下のような背景です。

  • ・ 始めは鼻水のみで後から熱が出てきた
  • ・ 保育園など周囲で手足口病や風疹などが流行している
  • ・ 家族内で感染症にり患した人がいる
  • ・ 前日に予防接種を受けた
  • ・ きょうだい児が風邪をひいていた

エピソードは発熱に影響する場合があるのですが、一方でエピソードに気を取られて本来の診断からそれてしまうこともあります。

たとえば、生後3か月の乳児で予防接種当日に発熱したケース。小児科を受診、体温40℃、心拍195回/分、呼吸数40回/分、SPO2100%。この子どもは、予防接種による発熱だろうと解熱剤を処方されて帰宅しました。しかし翌日活気が低下し、救急搬送。診断は下肢の骨髄炎による敗血症性ショックだったとのこと。

予防接種の熱にしては心拍数が多すぎること(生後3か月児の心拍数中央値は120回/分)さらに、全身に触れていれば大腿部を触れていた時に啼泣があったかもしれません。乳児は「足が痛い」などとは訴えられないため、全身状態の観察と合わせることがとくに重要なのです。

4. 初回発熱には熱性けいれんに注意する

1) 初めての発熱で熱性けいれん
子どもが生まれて初めて発熱するときには、熱性けいれんを起こすリスクがあります。熱性痙攣を起こす子どもは遺伝的要因が大きいのです。両親のどちらかが幼少期に熱性けいれんを起こしていた場合、子どもも熱性けいれんを起こすこともあり得ます。

初めてのけいれんでは、親御さんも慌ててしまうことが多いため、原因と対処法を知っておく必要があるでしょう。

2) 熱性けいれんの特徴

原因 不明(遺伝的要因が関係)
病態 脳からの刺激伝達エラー
症状 意識低下・眼球上天・全身性のけいれん
対応 横向きにして気道確保・静かな場所で休ませる・痙攣時間を計測
(ゆすったり叩いたりしない)

3) 鑑別すべき痙攣
痙攣の重責発作(5分以上続く痙攣)の場合は単なる熱性けいれんではなく、脳炎や髄膜炎など神経系の疾患であることも考えられます。重責状態の場合は救急車を呼んでもかまいません。早急に小児科を受診しましょう。

5. 小児発熱時の手当の仕方

1) 皮膚温に応じた対応
機嫌とともに全身の皮膚音を確認しましょう。首元に熱感があるにも関わらず手先指先が冷たく、皮膚の色が白っぽい場合は末梢の血管が収縮している状態であり、これから熱が上昇するサインです。活気もなく、ぐったりしているかと思います。悪寒戦慄(ブルブル震える)を伴う場合は、子どもは寒気を感じています。しっかり布団をかけ、部屋を暖めるなど、保温に努めましょう。

一方、熱が上がりきると手足や体幹、顔なども熱感が出てきて手足の皮膚は白っぽい色ではなくなり、冷感は消失します。子どもは熱さを感じています。掛物は薄手の布団かタオルケットのみとし、室内温度が高い場合は、エアコンなどを使用して、部屋の温度を下げましょう。

2) 氷枕の意味
氷枕・氷嚢などは解熱目的ではなく、発熱による子どもの苦痛を和らげる、安楽のために使用します。氷枕や貼るタイプの冷却材は安楽にはなりますが、解熱効果は薄いといわれています。

もちろん、発熱した辛い時に安楽を考えることも大切ですから、氷枕などの使用は可能です。しかし、解熱効果を信じて盲目的に氷枕などを使用するのは避けましょう。

解熱目的の冷却であれば、大きな動脈が通っている頸部(首元)や、腋窩(わきの下)、鼠径部(足の付け根)を保冷材にタオルを巻いて冷やすのが良いでしょう。

6. まとめ

子どもの発熱には感染症や代謝性疾患など多様なものがあります。発熱の原因を知識として頭に入れておくだけでも、子どもの状態を観察するときに力になるでしょう。

子どもの発熱時は、体温以外のバイタルサインをはじめ、機嫌や皮膚温など、全身状態を観察する必要があります。子どもは主訴をうまく口にできない分、大人が観察して気付いてあげる必要があるのです。

(島谷 柚希)

参考文献
  • 『見逃してはいけない小児救急』鐵原健一著(金芳堂)
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