コレステロールとは?数値が高くなる理由と対処法について解説します。

コレステロールとは、私たちの体内に存在している脂質のひとつです。
増えすぎると動脈硬化の原因となるため、コレステロールに対して、良いイメージを持っていない人も多いのではないでしょうか?
実は、コレステロールは私たちが生きていくために必要不可欠なもので、増えすぎても減りすぎても、病気の原因となる可能性があります。
この記事では、「コレステロールってそもそも何なの?」「コレステロール値を改善するためにはどうしたら良いの?」といった疑問について解説します。

コレステロールとは?

三大栄養素のひとつである脂質。私たちの体内に存在する脂質は、主に以下の4つに分けられ、それぞれがとても大切な役割を持っています。

コレステロール
コレステロールは、私たちの体を構成している細胞の膜や、副腎皮質ホルモン、性ホルモンといったステロイドホルモン、胆汁酸(胆汁の主な成分として、脂肪の消化や吸収に関係している)の材料となる重要な成分です。
私たちの体に存在するコレステロールは、体内で作り出されたものと、食品から摂取したものがあります。
すべてのコレステロールのうち7〜8割は、肝臓や腸などの臓器で、糖や脂肪によって作り出されたものです。

中性脂肪
中性脂肪は、体脂肪の主な成分で、単に「脂肪」と呼ばれることもあります。「脂肪」と聞くと、あまり良いイメージがないかもしれませんが、私たちにとっては重要なエネルギー源です。
中性脂肪は摂りすぎると、体脂肪として体内に蓄積されていき、肥満や糖尿病などの生活習慣病の原因になるので注意しましょう。

遊離脂肪酸
遊離脂肪酸は、中性脂肪が分解されるときに生じる成分です。
コレステロールや中性脂肪と比べると、体内に存在する量は少ないのですが、コレステロールと同じく大切なエネルギー源になります。
血糖値を調整する「インスリン」という物質の働きを抑える作用があるため、増えすぎると糖尿病などの原因となります。

リン脂質
リン脂質は、細胞の膜を構成している主な成分です。
不足すると、細胞膜が上手く機能しなくなって細胞の働きに支障が出たり、血管内にコレステロールが溜まりやすくなったりします。

善玉コレステロールと悪玉コレステロールとは?

善玉コレステロールと悪玉コレステロールとは?

生活習慣病との関連が深いことから、よく知られているのが、善玉コレステロールと悪玉コレステロールです。
「名前はよく聞くけれど、違いがよくわからない」という人もいるでしょう。
コレステロールは、たんぱく質と結合して「リポタンパク質」と呼ばれる物質になって、血液中に存在しています。そして、このリポタンパク質には、肝臓で作られたコレステロールを体全体に運ぶ役割と、不要なコレステロールを回収する役割があります。
コレステロールを運ぶリポタンパク質を「悪玉コレステロール」、コレステロールを回収するリポタンパク質を「善玉コレステロール」と呼んでいるのです。

善玉コレステロール
HDLコレステロールとも呼ばれ、体内で不要になったコレステロールや、血管の壁にくっついたコレステロールを回収する働きを持っています。この働きによって動脈硬化が抑えられるため、「善玉」コレステロールと呼ばれているのです。
回収されたコレステロールは、善玉コレステロールによって肝臓に戻されて、体内で再利用されたり、不要なものは便と一緒に体外へ排泄されたります。

悪玉コレステロール
LDLコレステロールとも呼ばれ、肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ役割を担っています。
悪玉コレステロールは、増えすぎると動脈硬化を促進してしまうため、「悪玉」コレステロールと呼ばれているのですね。
動脈硬化が進むと、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞といった、命に関わる病気を起こす原因にもなりますので、注意が必要なコレステロールです。

コレステロールの測定方法と基準値は?

では、善玉コレステロールや悪玉コレステロールの量は、どうしたらわかるのでしょう?
体内のコレステロールの量は、血液検査によって測定することができます。健康診断や人間ドックで、測定されることが多い検査項目には、以下のようなものがあります。
なお、基準値は検査機関によって、異なる場合があります。下記の基準値と、全く同じではない場合もありますので、注意してくださいね。

総コレステロール
総コレステロールとは、HDLコレステロールとLDLコレステロール、中性脂肪の一部を合わせたものです。基準値は、150〜219mg/dlです。

HDLコレステロール
HDLコレステロールは、男性では40〜86mg/dl、女性では40〜96mg/dlが基準値です。

LDLコレステロール
LDLコレステロールは、70〜139mg/dlが基準値です。

Non-HDLコレステロール
Non-HDLコレステロールとは、総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いたものです。
動脈硬化の原因となる、すべてのコレステロールの量を知ることができるため、LDLコレステロール以外にも、動脈硬化の原因となる物質があるかどうかがわかるのです。
基準値は、90〜149mg/dlです。

上記の検査項目のうち、HDLコレステロール、LDLコレステロール、Non-HDLコレステロールは、中性脂肪(トリグリセリドやトリグリセライドとも呼ばれる)と合わせて、「脂質異常症」の診断に用いられています。
脂質異常症とは、血液中の脂質が、過剰に増えたり減ったりしている状態を指します。
動脈硬化を進行させる原因となるため、生活習慣の改善や、薬による治療が必要になることもあるのです。
脂質異常症の診断基準は、以下の通りです。

  • ・ LDLコレステロール
    140mg/dl以上:高LDLコレステロール血症
    120〜139mg/dl:境界域高LDLコレステロール血症
  • ・ HDLコレステロール
    40mg/dl未満:低HDLコレステロール血症
  • ・ トリグリセライド
    150mg/dl以上:高トリグリセライド血症
  • ・ Non-HDLコレステロール
    170mg/dl以上:高Non-HDLコレステロール血症
    150〜169mg/dl:境界域高Non-HDLコレステロール血症

この基準に当てはまっても、すぐに治療の対象となるわけではありませんが、検査機関によっては、医師の診察を勧められることもあるでしょう。

コレステロール値が基準値をはずれる理由は?

コレステロール値が基準値をはずれる理由は?

コレステロール値が増減するときには、以下のような理由が考えられます。ご自身の状況に当てはまるものがあるかどうか、チェックしてみましょう。

脂質の摂りすぎ
コレステロールや動物性脂肪を多く含む食材を摂りすぎると、LDLコレステロールが増加しやすくなります。

運動不足
運動不足になると、HDLコレステロールが低下しやすくなります。

喫煙
喫煙は、HDLコレステロールを低下させる原因になります。

遺伝(家族性高コレステロール血症)
年齢が若いにもかかわらず、LDLコレステロールが高かったり、動脈硬化が進んで心筋梗塞や脳梗塞などを起こしたりする場合には「家族性高コレステロール血症」という病気の可能性があります。
LDLコレステロールを肝臓で上手く処理できないのが原因で、血縁者の中に同じような体質をもつ人が多いのが特徴です。
家族性高コレステロール血症の場合には、生活習慣を整えるだけでは、コレステロール値の改善が難しいため、薬による治療も合わせて必要になります。

閉経による女性ホルモンの減少
女性ホルモンは、閉経に向けて、徐々に減少していきます。
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、脂質の代謝に影響を及ぼすため、閉経した人は総コレステロール値が上昇する傾向にあるのです。

持病による影響
持病がある人の場合は、その影響でコレステロール値が増減することも。
原因となる病気には、甲状腺機能低下症やネフローゼ症候群、糖尿病といったものがあります。
また、利尿剤などの薬を服用していることが原因で、コレステロール値が高くなることもあります。

コレステロール値が基準値をはずれるとどうなるの?

「コレステロール値が異常でも元気だから大丈夫でしょう?」と思う人がいるかもしれませんね。
たしかに、コレステロール値が高かったり低かったりするだけでは、すぐに体調不良を起こすことは少ないかもしれません。
コレステロール値の異常が怖いのは、自覚症状がないまま、病気のリスクが高まっていくことです。
血中のLDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールが減少すると、血管内にコレステロールが溜まりやすくなります。その結果、血管が細くなったり、血液のかたまりができたりして、血液の流れが悪くなっていきます。
これが、ある日突然、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞といった、大きな病気を引き起こす原因になってしまうのです。
コレステロール値の改善には、生活習慣を整えることが大切です。
何も症状がなく元気なうちから、食習慣や運動習慣を見直して、命に関わる病気を防いでいきましょう。

コレステロール値を改善するにはどうしたら良い?

コレステロール値を改善するにはどうしたら良い?

では、コレステロール値を改善するためには、具体的にどんなことをすれば良いのでしょうか?
動脈硬化の進行を抑えるためには、LDLコレステロールを減らすだけではなく、HDLコレステロールを増やすことがポイント。
そのために必要なのが、主に食習慣を改善することです。
また、コレステロール値が大きく基準を外れている人や、持病がある人、生活習慣を改善しても効果がみられない人などは、薬による治療が必要になることもあるでしょう。
とくに、狭心症や心筋梗塞といった病気にかかったことがある人は、再発を予防するために、薬による治療を早くから行うことが勧められています。 コレステロール値を改善するための薬を飲んでいても、生活習慣がそのままでは、思うように効果がみられないこともあるでしょう。
下記の7つの項目を読んで、ご自身の生活習慣を見直すきっかけにしてみてくださいね。

適正体重を維持する
カロリーを摂りすぎると、体内でコレステロールが過剰に作られてしまいます。
摂取カロリーと消費カロリーのバランスを整えて、適正体重を維持するよう心がけましょう。
適正体重(kg)は、【身長(m)×身長(m)×22】で知ることができます。
また、1日に摂取するカロリーの目安を知りたい場合には、【適正体重(kg)×身体活動量(Kcal)】で計算してみましょう。
身体活動量は、「毎日の生活の中で、どれくらい動いているのか」によって異なります。
以下を参考に、ご自分の状況に一番近い活動量で計算してみてくださいね。

  • ・ 軽労作(デスクワーク中心の人や専業主婦の人など)の場合:25〜30(Kcal)
  • ・ 普通の労作(立ち仕事が多い人など)の場合:30〜35(Kcal)
  • ・ 重い労作(力仕事が多い人など)の場合:35〜(Kcal)

コレステロール、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の多い食品を摂りすぎない
コレステロールや、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸を多く含む食品を摂りすぎると、LDLコレステロールが増加するので注意しましょう。

  • ・ コレステロールを多く含む食品:卵類(鶏卵、たらこ、シシャモ)、内臓類(レバー、モツ)など
  • ・ 飽和脂肪酸を多く含む食品:肉の脂身や皮、ラード、バター、牛乳、ヨーグルトなど
  • ・ トランス脂肪酸を多く含む食品:マーガリンやショートニングを多く含む、市販のスナック菓子や洋菓子、アイスクリーム、揚げ物など

食物繊維を多く含む食品を摂る
食物繊維には、コレステロールを体外に排泄しやすくする働きがあり、コレステロール値を下げる効果も期待できます。
野菜類、きのこ類、海藻類、豆類のほか、胚芽米や麦ご飯なども、食物繊維が豊富なので、積極的に食べるようにしましょう。

DHAやEPAを多く含む食品を摂る
不飽和脂肪酸は、HDLコレステロールを下げることなく、LDLコレステロールを減らせる栄養素です。
魚や植物の脂に多く含まれているため、DHAとEPAを含むアジやサンマ、オレイン酸を含むオリーブ油などを摂取すると良いでしょう。

抗酸化作用のある栄養素を含む食品を摂る
血管の壁に溜まったLDLコレステロールが、活性酸素によって酸化すると、動脈硬化が進みやすくなります。
ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、カロテノイドなどを多く含む食品を摂って、LDLコレステロールの酸化を防ぎましょう。
ポリフェノールは、ブルーベリーや大豆、緑茶などに含まれています。カロテノイドは、鮭やカニ、エビといった食品に含まれています。
色の濃い野菜やフルーツを摂れば、カロテノイドと一緒にビタミンも摂取しやすくなりますよ。

禁煙する
喫煙は、HDLコレステロールを低下させ、LDLコレステロールを増加させます。
禁煙を心がけましょう。

有酸素運動を継続して行う
有酸素運動を定期的に続けると、HDLコレステロールを増加させる効果が期待できます。
ウォーキングや水泳、自転車に乗るといった運動を、1日30分は行いましょう。
運動は毎日続けることが理想ですが、これまで運動習慣のなかった人には、ハードルが高いかもしれませんね。
「忙しくて運動する時間がない」「運動が苦手で続けられない」という人は、毎日の生活の中で活動量を増やしてみてはいかがでしょうか。
「徒歩や自転車で買い物に行く」「週末は子どもと外遊びをする」など、少しずつ体を動かす習慣をつけていきましょう。

まとめ

コレステロール値は、様々な理由で変動することがあります。
健康診断や人間ドックで、コレステロール値の異常を指摘されたら、まずは生活習慣の見直しから始めましょう。
持病のある人は、早めにコレステロール値を改善した方が良い場合があります。
検査結果をかかりつけ医に見せて相談してみましょう。

(よしわら かおり)

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    [ https://dm-net.co.jp/qa1000_2/2006/05/q861.php ]
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  • SRL総合検査案内 HDLコレステロール
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  • SRL総合検査案内 総コレステロール
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