日本人の約4割、国民病ともいわれる「花粉症」 ~お薬の選び方や、服用する上で気を付けること~

花粉症の症状を治すために、原因や治療薬のことをきちんと理解しましょう

今や日本の国民病ともいわれている花粉症。
くしゃみや鼻水で春の訪れを感じる方も多いのではないでしょうか。
薬を飲んだり、マスクをしたり、外出を控えたりして対策されているかと思います。

一方で花粉症のお薬は、自分に合ったものをきちんと選べていますでしょうか。
お薬を飲むタイミングや飲む期間など、きちんと守って飲めていますでしょうか。
最近は市販薬も増えてきたことから、ご自身で花粉症の知識をもつことも求められるようになりました。
そこで今回は、花粉症の人に向けて、原因や治療薬、薬を服用する上での注意点について解説します。

1. 花粉症とは

日本人の約4割が花粉症
花粉症とは、別名「季節性アレルギー性鼻炎」ともいわれるアレルギー疾患です。
季節ごとに飛散する花粉に対して体がアレルギー反応を起こします。
体内で花粉を「異物」と認識して、分泌した化学物質(ヒスタミン)が、花粉をできるだけ体の外に出そうとします。
そのため鼻症状として、くしゃみで吹き飛ばす、鼻水や涙で洗い流す、鼻づまりで中に入れないように防御するなどの症状が出てきます。

実は花粉症の患者は年々増えています。
国内の花粉症患者は2008年に29.8%であったのに比べて、2019年はなんと42.5%であったことが報告されています。
この理由は、戦後に植えられたスギの木が成長したことや、気象の温暖化により花粉が生じやすいなど花粉自体が多くなっているためだといわれています。

花粉症とは

多くの花粉症は春先がピーク
花粉症の原因は、スギ花粉が約7割を占めるといわれています。
スギ花粉は2~4月にかけて飛散しますが、花粉症の人が春先に症状が出るのはそのためです。
特に気温が高めの晴れた日や風の強い日、雨の翌日でよく腫れた日は花粉が飛散しやすいため注意が必要です。

ただし、スギ花粉がピークの時期を過ぎても症状がなくならない人は、それ以外の花粉が原因かもしれません。
実はスギ花粉以外にも、原因となる花粉は全部で約60種類もあるとも報告されています。
スギは春先にピークとなりますが、その他の花粉は異なる時期に飛散しており、発生地域や症状も少しずつ異なります。

以下に、花粉症の主な原因の花粉の飛散時期をまとめした。
あなたのくしゃみや鼻水の症状が、以下の時期に重なっていないか一度確認してみましょう。

花粉症の主な原因 飛散時期
スギ花粉2~4月
ヒノキ花粉3~5月
シラカンバ花粉4~6月
イネ花粉5~6月
ブタクサ花粉8~10月
ヨモギ花粉8~10月
カナムグラ8~10月

花粉以外の可能性も ~通年性アレルギー性鼻炎とは~
あなたのくしゃみや鼻水の症状、春先だけでなく一年中続いていませんか。
もしかしたらそれは、花粉症ではなく「通年性アレルギー性鼻炎」かもしれません。
季節にかかわらず年中つづくアレルギー疾患であり、原因物質にはハウスダストやダニ、犬や猫の毛などがあります。
治療薬は花粉症の治療とも似ていますが、生活上の対策は、部屋の掃除や寝具の洗濯などが必要となり異なります。
同じアレルギー疾患ではありますが、対策が少し異なりますので、あなたのその症状の原因物質は何であるか、きちんと確認しておきましょう。

2. 花粉症の市販薬

ドラッグストアで市販されている花粉症のお薬には、内服薬、点眼薬および点鼻薬があります。
これら3種類の薬は、花粉症の症状の場所によって使い分けられます。

内服薬

1. 内服薬
もっともなじみのある口から飲むタイプのお薬です。
鼻の症状(鼻水やくしゃみ、鼻づまり)に効果が期待できます。

内服薬に含まれる「抗ヒスタミン薬」という成分が、アレルギー反応後の症状を抑える効果をもっています。
よく「花粉症の飲み薬は眠くなる」といわれますが、それはこの抗ヒスタミン薬に眠気の副作用があるためです。
しかし最近の市販薬に含まれるのは「第二世代抗ヒスタミン薬」というもので、眠くなりにくいように改良されています。
この第二世代の抗ヒスタミン薬は、副作用が少なくなっただけでなく、アレルギー反応の元を抑える作用が加わり、より効果も期待できることが特徴です。

主な市販の内服薬として、クラリチンやアレグラ、アレジオン、エピナスチン、エバステルなどがあります。
ただし病院の処方薬には、市販薬よりも効果が強い薬がありますので、これら市販薬で効果が十分でなかった方は、病院を受診しましょう。

点眼薬

点眼薬
直接目に点眼することで、目の症状(目のかゆみや充血)に効果が期待できます。

点眼薬に含まれる成分には、アレルギー反応の元を抑える「抗アレルギー剤」と、アレルギー反応後のかゆみを抑える「抗ヒスタミン」があり、これらの成分が組み合わせた薬が市販されています。
抗ヒスタミンはかゆみの症状を抑えるため、抗アレルギー剤よりも即効性が期待されます。

主な市販の点眼薬として、アルガードやアイリス、アイフリー、マイティアなどがあります。

点鼻薬

点鼻薬
直接鼻に薬を噴霧することで、鼻の症状(鼻水やくしゃみ、鼻づまり)に効果が期待できます。

点鼻薬に含まれる成分には、アレルギー反応の元を抑える「抗アレルギー剤」と、アレルギー反応による症状を抑える「抗ヒスタミン成分」、炎症を抑える「ステロイド成分」、鼻粘膜の炎症や腫れを抑える「血管収縮剤」があり、これらの成分が組み合わせた薬が市販されています。
ステロイド成分は、幅広い鼻炎症状に効果があります。
血管収縮剤は即効性がありますが、実は使い続けると効きにくくなることが知られています。
症状がひどい時のみ使うのがよいでしょう。

主な点鼻薬として、ナザールα、アレルカットC、エナジー点鼻薬、パブロン点鼻薬などがあります。

3. 一番眠くなりにくい薬はどれ?

点眼薬や点鼻薬は、内服薬よりも眠くなりにくいとされています。
しかし稀に、これらの薬でも、どうしても眠くなってしまう方もいます。

内服薬を寝る前に飲むことで、日中の眠気を防ぐ方法もおすすめです。
とくに内服薬としてはアレグラやクラリチンがよいでしょう。
説明書(添付文書)に眠気や、車の運転に関する注意書きがないため、一般的に眠気は出にくいとされています。

4. 病院の処方薬は、市販薬より効くの?

市販薬は、病院の処方薬とくらべて効きめはゆるやかです。
処方薬として長年使われて安全性が確かめられたお薬が、市販薬として販売されるようになるためです。

以下が病院でよく処方される内服薬です。
病院では医師が、これら多くの種類からそれぞれの効き目や眠気の強さも考慮して、あなたに合ったお薬を処方します。
症状が出てきたら、早めに受診するようにしましょう。
そして症状が落ち着いてきたようであれば、市販薬で様子を見るのもいいでしょう。

病院でよく処方される内服薬一覧

薬剤名効き目眠気
処方薬のみ アレロック ++++ ++
ザイザル++++
ディレグラ++++
デザレックス++++
ビラノア+++
タリオン+++
市販薬あり
(処方薬もあり)
ジルテック ++++ ++
アレジオン+++
アレグラ++
クラリチン
処方薬のみ
薬剤名アレロック
効き目++++
眠気++
処方薬のみ
薬剤名ザイザル
効き目++++
眠気
処方薬のみ
薬剤名ディレグラ
効き目++++
眠気
処方薬のみ
薬剤名デザレックス
効き目++++
眠気
処方薬のみ
薬剤名ビラノア
効き目+++
眠気
処方薬のみ
薬剤名タリオン
効き目+++
眠気
市販薬あり(処方薬もあり)
薬剤名ジルテック
効き目++++
眠気++
市販薬あり(処方薬もあり)
薬剤名アレジオン
効き目+++
眠気
市販薬あり(処方薬もあり)
薬剤名アレグラ
効き目++
眠気
市販薬あり(処方薬もあり)
薬剤名クラリチン
効き目
眠気

各薬剤の添付文書から作成

5. お薬はいつから飲み始めるの?症状がなくなればやめてもいいの?

症状が出始めたら早めにお薬を飲み始め、花粉の季節が終わるまで飲み続けるのが効果的です。

お薬を飲み始めるのが遅くなると、体の中では症状の原因となる化学物質(ヒスタミン)がたくさん出ていて、鼻粘膜や目の粘膜の炎症も進んでいるために、症状を抑えきれなくなります。
症状が出始めたまだ粘膜の炎症が進んでいない間に、お薬を飲み始めることで、症状がひどくなるのを防ぎましょう。

また、花粉が飛んでいるのに症状が治まったからと、お薬をやめたりしていませんか。
花粉が飛んでいるために、お薬をやめれば、また症状が出てきます。
薬を再び飲もうとするときには、体内では原因の化学物質がたくさん放出されているため、症状を治えるのに時間がかかってしまいます。
花粉の季節が終わるまで、薬を飲み続けることでより効果が期待できます。

6. その他の花粉症対策 ~セルフケア~

花粉症の症状を予防するためには、薬以外にもさまざまな対策があります。

日常生活でできるだけ花粉を避ける
具体的には、次のような行動を心がけましょう

  • ・ 外出をする時は、眼鏡やマスク、帽子、スカーフをつける
  • ・ 家に帰った時は、外出でついた花粉をとるため、うがいや手洗い、洗顔、鼻をかむようにする
  • ・ 家にいる時は、花粉が家の中に入らないように、窓やドアの開閉は短時間で行う
  • ・ 外出時に着る上着は、花粉が付着しにくい表面がすべすべの綿やポリエステルの生地を選ぶ

目もとをタオルで冷やす
目のかゆみや充血が激しいときは、冷やしたタオルをまぶたに数分間あてましょう。
冷やすことで、目の回りの知覚神経を鈍らせ、かゆみの症状を抑えることができます。

ストレス、睡眠不足、飲みすぎは避ける
ストレスや睡眠不足は、免疫のバランスを崩れて体が花粉に敏感に反応しやすくなるため、花粉症の症状が悪化してしまいます。
アルコールの飲みすぎは、血管を拡張させることで、鼻づまりや目の充血の症状を悪化させます。
体が疲れていると思ったらしっかりと寝て休み、アルコールは飲みすぎないように注意しましょう。

7. まとめ

花粉症のお薬は種類が増えてきました。
市販薬も増えてきたことから、自分で花粉症の知識をつけることも求められます。
ただしお薬を選ぶときに分からないことや、不安があることは当然です。
その際は、医師や薬剤師にきちんと相談して、自分に合った治療を選ぶようにしましょう。

(見元 美佐)

引用文献
  • 日本耳鼻咽喉科学会会報. 2020;123(6):485-490.
  • 日本花粉学会会誌. 2020;65(2):55-66.
  • 厚生労働省 花粉症特集(2021年3月13日アクセス)
    [ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kafun/index.html ]