オーガニック=肌に優しいって本当?

近年、美容や健康をはじめとして「ナチュラル思考」がブームになっています。
一方で、なぜオーガニックにこだわるのでしょうか?
人工的な化学物質が何となく怖い、不安…という声も多いでしょう。
ただ純粋に「オーガニックだから肌に優しいはず!」と思っていると、思わぬトラップにはまってしまうかもしれません。

今回は、オーガニック化粧品の概念を科学的に説明します。
肌荒れやアトピーなどに長年悩まれている方、より素敵な肌になりたい方など、健やかな肌づくりを支える情報としてもらえたら嬉しいです。

目 次

【1】オーガニックとは?

オーガニック(英語:organic)とは、「化学的に配合された肥料、成長刺激剤、抗生物質、または農薬を使用せずに、動植物由来の肥料などを使用して生産された食物」を意味します (※1)。
これは、自然の持つ力を大いに活用し、ヒト・環境への負荷を可能な限り減らすための取り組みとも言えます。
たとえば、食品であれば「無農薬・有機栽培」「添加物や着色料の未使用」といった表示を気にする人が増えています。
現在では「オーガニック」「有機」は食品にとどまらず、オーガニック化粧品、有機空間など、我々の生活の一部として広がっている言葉です。

【2】「オーガニック化粧品」の由来

さて、「オーガニックコスメ」という言葉は、今や多くの女性誌やSNSでも取り上げられるようになりました。
この言葉が広まったきっかけは、2001年、日本の環境NGO「アイシスガイアネット」が発行した単行本「オーガニックコスメ」でした。
彼らは、「人と地球にやさしいオーガニックライフを広げよう」という考えから、「オーガニック」という言葉にこだわったのです。
2020年3月に発売された「ジャパン・オーガニックコスメ」(日本オーガニックコスメ協会)には、天然成分100%にこだわる国産コスメが紹介されています。
今や、日本オーガニックコスメ協会の認定基準「JOCA推奨品マーク」のように、合成成分完全フリーの条件を満たす化粧品の称号も設定されています。

【3】自然派、無添加=オーガニックではない!

よくある間違いが「無添加化粧品」と「オーガニック化粧品」を同じカテゴリーだと認識しているケースです。
この二つは全く別物なのですが、ご存知でしょうか?

先述のように、「オーガニック化粧品」は、植物由来成分を中心に配合し、化学成分を全く使用せず、または少量のみ使用して作られるもの。

一方、無添加化粧品は、以下のように定義されています。

無添加コスメの場合、「無添加」、「無配合」、「不使用」等ある種の成分を配合していないことを意味する用語を表示する場合は、何を配合していないかを明示すること (※2)。

たとえば、「パラベン無添加」「アルコールフリー」「紫外線吸収剤無配合」「タール色素不使用」など、何が無添加なのかを記載する必要があります。

無添加=オーガニックという誤った認識ですと、無添加だから肌に優しいと思われがち。
人工的な化学成分を気にする方の場合、「無添加」ではなく「オーガニック」の化粧品が該当します。

【4】オーガニック化粧品は本当にいいの?

では、オーガニックコスメを使えば安全・安心なのでしょうか?

最近だと、化粧品や健康食品などのCMで、肌のきれいなモデルや俳優が商品を宣伝しているのを見て、「これを使ったら肌がきれいになりそう!」「ニキビ悩みがなくなりそう!」と思って、商品を購入することも多いかもしれません。

ただ、オーガニックのような自然由来の成分も、化学物質であることには違いありません。

その成分がご自身の体質に合わなければ、症状が悪化することもありますし、なかなかきれいな肌を手に入れることが難しいかもしれません。
気温や湿度が変われば肌の状態も変わるので、春夏に問題なく使っていた化粧品が秋冬になって急に肌に合わないケースもあります。

実際のところ、オーガニック化粧品で肌荒れするということはあるのでしょうか?

【5】オーガニック化粧品で肌荒れが生じる理由

オーガニック化粧品を使っていても、時に肌に合わない製品と出会うことがあります。
オーガニック=肌に優しいと思っていたのにどうして?

その背景には、おもに次の3つの理由が隠れているのです。

その1. 特定の植物由来成分が体に合わない 植物も、厳しい自然環境で生き延びるために、多様な生きる知恵を獲得しています。
そのため、刺激性やアレルギー誘因物質を含む成分を持っていることもあります。

たとえば、10年以上前に「コンフリー(Symphytum offcinale)」という成分が健康食品ブームになりました。
しかし、コンフリーに含まれる「ピロリチジンアルカロイド」は、長期的な過剰摂取によって肝機能障害などを引き起こすことが報告され、食品への配合規制が制定されたのです (※3)。

他には、アロエも人によっては気を付けた方がいい植物です。
肌の炎症を抑える効果が知られていますが、皮膚につけると接触性皮膚炎を起こしやすいため (※4)、生理中の方や妊娠中の方など、敏感な体質の時期には控えることが推奨されています。

このように、天然由来成分でも後になって危険性がわかるという事例がたくさんあります。
植物には、それぞれ身を守るための毒物成分などが含まれており、時として人の免疫反応の許容値を超えてしまうこともあります。

一方で、人工的な化学物質である「合成香料」などは、天然由来成分から特定の化学物質のみを抽出・精製し、不純物を取り除いたピュアな状態を科学的に作られたもの。
オーガニックよりも、人工的な化学物質の方が肌への負担が少ないこともあります。

いずれにしても、「オーガニック=安全ではない」ことを念頭に置いておくことが重要です。

その2.植物アレルギーなど敏感な体質である 肌が弱い方、敏感肌になっている方は特に、天然由来成分による影響を過敏に受けている可能性があります。

たとえば、卵焼きをちょこっと食べただけでアレルギー反応が出る人もいれば、生卵だと反応してしまう人、全くアレルギーが出ない人もいます。
これは、焼くことで卵に含まれるアレルギー性物質の成分が変性し、その作用が低減されますが、生で食べた場合に、体が拒否反応を起こすことから生じます。
また、アレルギー性物質に対する耐性や体調などの違いによって、症状が出やすいか否かも変わります。

オーガニック化粧品でも同様に、肌が弱い方や敏感肌の方は、天然由来成分に反応しやすい可能性が大いにあります。
・天然成分から植物エキスなどを配合する際に使った化学物質
・残留している植物毒
など、植物の配合量が上がれば上がるほど、オーガニック化粧品によって肌トラブルが悪化するケースもあります。

その3.現代人のライフスタイルによる 現代人は、紫外線や大気汚染といった過酷な自然環境、社会生活のストレスなど、様々な外的・内的要因から肌が弱まりやすくなっています。
疲れやすい、睡眠不足、ストレス過敏、花粉症やアトピーといった症状が少しでもある方は、最新の皮膚科学や生物学など科学的根拠に基づいて作られた化粧品から試してみるのがおすすめです。
特に、ボタニカルやオーガニックを選ぶ時は、アレルギー源となりうる植物由来成分を含んでいない、肌が弱くなっている方でも安心して使えるよう配慮された化粧品を選ぶとよいでしょう。

【6】自分に合うオーガニック化粧品の探し方

では、どうやって自分の肌に合いそうなオーガニック化粧品を見つければいいのでしょうか?
まずは、商品の成分表示を見てみましょう。
次に、有効成分と謳っている天然由来成分について、植物の特徴や成分の効果を調べます。
たとえば、市販の商品に配合されている植物エキスの効能についてまとめたサイトもあるので、ぜひ参考にしてみてください (※5)。

植物以外にもアレルギーを持っていたり、化学物質に対して反応が出やすかったりする方は、皮膚科などで専用の医薬品を処方してもらうことも大切です。
化粧品は、あくまで症状を緩和・改善させる「効果が期待される」のであって、「症状を治す」ものではありません。
また、オーガニック化粧品の場合は、肌や体質に馴染むまでに時間がかかるとも言われています。
従来の化粧品からオーガニック化粧品にシフトする方は、効果が表れるまで長期的に使用を続けてみることも大事です。
普段使いのスキンケアにはオーガニック化粧品を使いながら、なかなか治らない箇所には医薬品のように症状に特化した製品で対処するのもいいでしょう。

余談ですが、化粧品メーカーによって原料や製品の安全性評価の厳しさが異なります。
原料の安全性評価は、薬事法や化審法など、国内でもいろいろな法規制があります。
一方で、全メーカーが厳しい審査に通る研究をしているとは限りません。
販売元や製造元、ブランドの信頼度を知るためには、メーカーのホームページを参考にするのもおすすめです。

化学や生物学に興味がある方は、オーガニック化粧品に含まれる有効成分の効果や安全性情報など、論文や科学系の雑誌で調べてみると勉強になり、より自分に合ったオーガニック化粧品と出会えるかもしれません。

さいごに

オーガニック化粧品は、肌にも体にも優しいというイメージが強いのですが、科学的に考えると、肌の体質やライフスタイルによって合う・合わないが分かれるもの。
さらに、今の世の中は、自然環境中にも様々な化学物質が蔓延しているため、肌を守るためには人工的な化学物質の力を借りなければならないケースも増えています。
普段使いのスキンケアにはオーガニック化粧品、症状が長引く場合には医薬品や医薬部外品と使い分けるのもいいと思います。

ご自身の肌状態に耳を傾けながら、肌にも地球にも優しい取り組みについて考えてみてはいかがでしょうか。

(安田真生子)

参 考
  • ※1:Merriam-Webster辞書
  • ※2:化粧品公正取引協議会「化粧品の表示に関する公正競争規約」より「化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則 別表4-1【無添加等無配合を意味する用語】」http://www.cftc.jp/kiyaku/kiyaku02-4.html(2020年9月4日現在)
  • ※3:厚生労働省「シンフィツム(いわゆるコンフリー)及びこれを含む食品の取り扱いについて(その2)」https://www.mhlw.go.jp/topics/2004/06/tp0618-2.html(2020年9月4日現在)
  • ※4:久保容二郎、野中薫雄、吉田彦太郎「アロエによる刺激性接触皮膚炎」昭和62年 皮膚・第29巻・第2号・p.209-212
  • ※5:化粧品成分オンライン「植物エキスの解説と化粧品に使われる植物エキス一覧」https://cosmetic-ingredients.org/basic/%E6%A4%8D%E7%89%A9%E3%82%A8%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%81%AE%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E3%81%A8%E6%A4%8D%E7%89%A9%E3%82%A8%E3%82%AD%E3%82%B9%E4%B8%80%E8%A6%A7/(2020年9月4日現在)