要精密検査と健康診断で言われる割合は?放置・行かないとどうなる?

毎年の健康診断で、要精密検査と言われたことはありませんか。要精密検査と記載されていると、多くの方が不安に感じます。

要精密検査とは健康診断や人間ドックでなんらかの異常が見つかり、その原因を詳しく調べ治療が必要かどうか、より詳しい検査が必要だということを意味します。
人間ドック協会の判定区分はD判定にあたります。

実は、健康診断で要精密検査と判定される割合は決して少なくありません。しかし「忙しいから」「症状がないから」とつい後回しになってしまうことも。

この記事では要精密検査の結果を放置しているとどうなるのか、リスクについて具体的に説明します。また要精密検査と言われたらどうすべきか、再検査の流れや注意点も詳しく解説します。

要精密検査と言われた方や再検査に行けていない方は、ぜひ最後までお読みいただき、健康を守るための一歩を踏み出しましょう。

要精密検査と健康診断で言われる割合は?

要精密検査と健康診断で言われる割合は?

健康診断で要精査検査と判定される方の割合は、34%です。この割合は年々上昇しています。特に40代以降では生活習慣病のリスクが高まるため、要精密検査と診断される割合が増えます。
こうした判定を受け指示通り再検査を受診される方は74%ですが、残りの約26%の方は受診していません。およそ4人に1人が医療機関の受診をしていない現状です。
そして精密検査後にがんが発見される割合は、臓器によって異なりますが1.5〜4.2%とされています。
たとえば、乳がんでは精密検査後の発見率が高い傾向があり、およそ4.15%です。10000人の方が乳がん検診を受けたとして、そのうち30人の方から乳がんが発見される確率です。

精密検査と再検査
精密検査と再検査は混同して考えられがちですが、定義が異なります。精密検査と再検査はどちらももう一度検査するという点では同じですが、検査内容や目的、その後の流れが異なります。
以下の表に示します。

項目再検査精密検査
目的 異常が一時的なものか判断 異常の原因を特定し、診断を確定する
検査内容 初期検査とほぼ同じ検査を再度実施 より詳細な検査を実施
(CT、MRI、内視鏡など)
受診場所 初期検査を行った医療機関 専門の医療機関に紹介される場合もある
判定区分 C D

要精密検査を放置するとどうなる?

要精密検査を放置するとどうなる?

もちろん何か法的に処罰されるわけではありません。ですが、ずっと気がかりなことを抱えたまま生活するのは、精神的に良いことではありません。
精密検査に行かないという選択は、早期発見・早期治療のチャンスを逃していることにもなります。「少し様子を見ようかな」という自己判断で放置してしまうのは、とても危険です。
精密検査を放置すると、病状の悪化、QOLの低下、治療費が高額になるリスクが考えられます。

病状の悪化
例えば高血圧、高血糖、脂質異常などの生活習慣病は自覚症状がないまま進行し、心疾患や脳卒中などの大きな病気を発症するリスクがあります。最初は自覚症状がない場合でも、いずれ症状が出た時には重い病気に発展していることにもなりかねません。痛み、吐き気、倦怠感など感じている症状が強く、長く続くようになります。元の病気とは別の病気を併発する合併症を起こす場合もあり、入院が必要になるケースも。最悪、命に関わる可能性もゼロではありません。

病気が進行するとQOL(生活の質)が低下する

  • ・ 身体機能の低下:歩行困難、視力低下、身体の機能が低下しやりたいことができなくなる
  • ・ 精神的な負担:病気への不安、治療への負担、孤独感など精神的ストレスが増加し心の状態が悪化する
  • ・ 生活の制限:痛みや不快感の症状により、身体的な苦痛が増えることで日常生活が制限され、満足度が低下する
  • ・ 社会的活動の制限:病気のために仕事、趣味、友人との交流など社会的な活動が制限され生活に張り合いがなくなる

治療費が高額になる
病状が初期の場合は、薬物療法や生活習慣の改善など、比較的簡単な治療で症状を抑え込める場合がほとんどです。病気が進行すると薬だけではコントロールできなくなり、手術や高度な治療機器が必要になるケースが増えます。これらの治療は初期治療に比べ高額です。さらに基礎疾患の悪化による合併症の治療も必要となることがあり、入院期間が長くなる要因です。

要精密検査と健康診断で診断されたのに再検査に行かない理由

要精密検査を放置すると危険な可能性があると説明しましたが、26%はそのまま放置というのが現状です。再検査に行かない理由について、調査を元に以下の要因があると分かっています。

  • ・ 必要性を感じなかった
    「寝不足だから大したことない」「まあいいか、自分でなんとかしよう」「特に症状があるわけでもないし、様子をみよう」このような自己判断で受けない方が多数派です。また「健康に気をつかっており自信がある」は生活習慣病には関係のあることですが、がんには関係ありません。がんは、体力や健康に関係なく誰でもかかる可能性があります。
  • ・ 忙しかった
    仕事や家事など忙しい日々を送っている中で、新たに病院に通う時間や手間をかけるのが億劫に感じてしまう人もいます。医療機関の受診となると、1日かけてさまざまな検査を行うというイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。実際は数時間、半日あれば受けられる検査がほとんどです。
  • ・ 面倒だった
    生活に支障が出ていないのに、わざわざ受診するのは面倒に感じる方が多いでしょう。緊急性がないからと後回しになりがちです。
  • ・ どこに受診すればいいかわからなかった
    検査内容やその必要性について十分に理解できていないために、放置してしまうケースもあります。
  • ・ がんや病気がみつかると怖いから
    病気が見つかることへの恐怖心や不安が募り受診を避けてしまうと、その間にもがんや病気は進行してしまいます。後から見つかる方がもっと怖い思いをします。
  • ・ 経済的な負担が気になる
    医療機関ではほとんどが保険適応で、自治体では割引もあり低価格で受けられます。

こうした結果をみると、精密検査の実情について知らない方や偏見を持っている方が多くいるのかもしれません。正しい知識や関心を持つことが健康への第一歩です。身体への負担、心への負担、そして経済的な負担を考えるとできるだけ早めに精密検査を受けるべきです。放置するよりは良い結果になることが多いでしょう。

要精密検査の結果を受けてすべきこと

要精密検査の結果を受けてすべきこと

健康診断は受けて終わりではなく、結果に対して適切な行動をとることが大切です。要精密検査と言われたら、以下のステップを参考にしてください。

  • ・ かかりつけ医に相談
    かかりつけの医院がある場合、健康診断の結果や気になる症状についてかかりつけ医に相談します。かかりつけ医が二次検査に対応しているなら、紹介状不要で受診できます。
  • ・ どこで受診するか
    受診する医療機関は、かかりつけ医、近所のクリニック、総合病院などがあります。総合病院や大学病院であれば、高度な医療機器を扱っていることが多いですが、紹介状がないと診察料のほかに特別料金(初診:7,000円以上)が発生するので注意が必要です。多くの健診施設は健康診断の結果と共に、紹介状とおすすめする施設をいくつか同封してくれるのでそちらを参考に選ぶといいでしょう。
  • ・ 受診に持参するもの
    健康保険証
    健診結果
    診療情報提供書(紹介状)
    画像CD-R(健診結果に同封されている場合のみ)
    お薬手帳
    診察券(受診する医療機関の診察券を持っている場合のみ)
  • ・ 精密検査を受ける際の注意点
    検査の種類や内容によって注意点があります。特に食事時間は、安全で正確に検査を進めるためにも重要です。胃内視鏡検査、大腸内視鏡検査は腸内に食べ物が残っていると観察不良の原因になります。腹部超音波検査、CT、MRIは食事により腸の動きが活発になり、画像が不鮮明になります。また採血検査でも正しい検査結果を得られません。検査の時間帯が午前か午後かでも、食事の制限時間が異なるため事前に確認しておきましょう。喫煙やアルコール摂取も控えてください。服薬がある場合は、かかりつけ医の指示に従い服薬します。検査前日は、十分な睡眠をとり体調を整えておきましょう。
  • ・ 精密検査の費用目安(別途初診料等)
検査項目費用範囲
血液検査 2,500~3,000円
尿検査 1,000~2,000円
MRI検査 5,000~20,000円
CT検査(1部位あたり) 5,000~10,000円
超音波検査(部位による) 1,000~3,000円
心電図 400~1,000円
ホルター心電図 5,000円前後
胃内視鏡検査
(※ 組織診も行う場合)
3,500~5,000円
※ +3,500〜10,000円
大腸内視鏡検査
(※ 組織診も行う場合)
5,000〜10,000円
※ +3,500〜14,000円
子宮頚部の組織診 5,000円前後
  • ・ 精密検査はいつまでに受診すべきか
    3ヶ月または6ヶ月後の受診が目安です。この期間内であれば、病状の進行が穏やかで早期発見・早期治療がしやすい状況であると考えられます。一方緊急性の高い異常値も存在し、例えば腎不全の疑いや画像診断で明らかな腫瘍が発見された場合は、「近日中」「2週間以内」と指示されることがあります。

要精密検査と言われたからといって、絶対に何かしらの疾患にかかっているとは言いきれませんので、あまり重く受け止めずに精密検査を受けることをおすすめします。健康診断は念のため要精密検査にしている場合がほとんどです。見逃して身体はもちろん、心にも大きな負担を負ってしまうよりも精密検査を受けて何も異常がなかったと診断を受ければ穏やかな毎日を過ごせるためです。

まとめ

まとめ

要精密検査と健康診断で言われたら不安に思う方も多いかもしれませんが、決して1人で悩まず、医師に相談しましょう。

自己判断で受診を放置するのは禁物です。放置すると、病気の早期発見の機会を逃し、さまざまなリスクを引き起こす可能性があります。特にがんや生活習慣病は早期発見・早期治療が重要です。

仮に病気が見つかったとしても、自覚症状のない時点での発見はおおむね早期発見と診断されます。

早期であれば治療における身体の負担や経済的な負担は軽くすみます。取り返しがつかなくなる前に見つかってよかったと前向きに気持ちを切り替えましょう。

また何も問題がなかった場合は、安心して生活を送れるのも一つの意義と言えます。検査結果に基づいて生活習慣を見直せば、健康的な生活を送るきっかけになるでしょう。

健康診断を受けたのですから、結果報告を放置せず早めの受診を心がけましょう。この記事が少しでも参考になれば幸いです

(小笠原 ゆりあ)

参考文献
  • [ https://t-pec.jp/work-work/article/358 ]
  • [ https://www.ningen-dock.jp/ningendock/pdf/2022hanteikubun-3.pdf ]
  • [ https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202301_00001.html ]
  • [ https://www.kyoukaikenpo.or.jp/file/202310.pdf ]
  • [ https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/data/detection/ ]
  • [ https://www.kenkan.gr.jp/detailed-examination/ ]
  • [ https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat525/r2/20915/ ]
  • [ https://www.mrso.jp/mikata/851/ ]