緑内障の視野欠損はどうやって調べるの?【自覚症状がない進行に注意】

緑内障は白内障と並んでよく耳にする病名ですよね。
しかし緑内障と白内障は全く別の病気です。

白内障は目の中の水晶体と言うレンズが加齢ともに白く濁ってくる病気で、濁りを取り除いて人工のレンズを入れることで視力が回復します。
(目の奥に異常がない場合に視力回復が可能です。)

一方緑内障の名前の由来は諸説ありますが、古代ギリシャのヒポクラテスが「目が地中海の海の色のように青くなり、やがて失明状態になる」と表現したことからこの名前がつけられたと言われています。

今回は、日本での中途失明原因第一位の緑内障について視野障害の観点から見ていきましょう。

緑内障は視野が欠ける病気

緑内障は視野が欠ける病気

緑内障は、目の中を流れる「房水」という水の流れが何らかの理由で阻害されることで起こります。
その結果眼圧が上がり、視神経を障害して視野の欠損を引き起こしてしまう病気です。

緑内障の初期は自覚症状のないまま進行します。
気づいたときにはすでに進行していたなんてちょっと怖いですよね。

そこで眼科では40歳を過ぎると症状がなくても、定期健診を受けることを推奨しています。
家族に緑内障の方がいる場合は、30代のうちから受診しておくと安心です。

眼圧や視神経の状態をチェックすることで、将来緑内障として診断される可能性があるかどうかも分かります。

緑内障の自覚症状とは?

では緑内障が進行し始めて感じる自覚症状とはどのようなものでしょうか。

主な症状は以下の通りです。

  • ・ ぼやけて見える
  • ・ 視野が欠ける
  • ・ 目が重い・鈍痛がある
  • ・ 頭痛がする・吐き気がする

一つずつ見ていきましょう。

ぼやけて見える・視野が欠ける
緑内障が進行し始めてまず初めに感じる自覚症状は、ぼやけて見えるということです。

初期のころは完全に視野は欠損せずに視野の感度が低下してくるだけなので、ぼやけて見えるという状態になります。

また普段は物を両目で見ており、片目の視野が若干障害されても、もう片方の目がカバーするので視野の欠損に気づきにくいという点も要注意です。

何となく見えにくい部分があると気づいたときには、視野障害がある程度進んだ状態になっています。

時々片目ずつつぶって見え方をチェックすれば日常的な健康観察になります。
白い壁を見てかげになっているところはないか、ぼやけているところはないかとセルフチェックしましょう。

ではここで、右眼の視野欠損の一例をご紹介します。

典型的な緑内障の視野欠損として、鼻側の視野から障害されることがよくあります。
何となく鼻側に見えにくいところがある、ぼやけて見えるなどという症状で気づきます。

【 1.初期 】

緑内障の自覚症状(初期)

景色の見え方を見てみると、右眼の鼻側上方にわずかに視野の欠損があります。
このぐらいの欠損なら、左目がカバーしてくれるので視野の異常になかなか気づくことは出来ません。

緑内障が進行すると、見えにくい範囲がだんだんと広がってきます。
視野は障害された視神経線維層に沿って欠損していきます。

【 2.中期 】

緑内障の自覚症状(中期)

こちらの見え方は、鼻側上方から始まった視野欠損がアーチ状に広がっています。
これはビエルム領域と言って、緑内障の典型的な領域が障害された視野欠損の形です。

このころには何か見えにくいところがあると言った自覚症状が出てきます。

【 3.末期 】

緑内障の自覚症状(末期)

そして緑内障末期には、周辺視野から中心にかけても欠損範囲が広がってきます。

ここまで視野欠損が進行すると、日常生活にも支障をきたします。
顔を動かして見えるところを探さなくてはいけない、人とぶつかりそうになる、車が運転できないなど困難をきたします。

目が重い・鈍痛がある・頭痛がする・吐き気がある
眼圧が上がっている場合に、目が重かったり鈍痛を感じることがあります。

また、眼痛に加えて頭痛、吐き気などの症状が現れたときには緑内障発作(急激に眼圧が上がる)が起こっている可能性があります。
緑内障発作の場合は、早急に治療が必要であり、すぐに眼圧を下げなければいけません。

このような症状がみられたらすぐに眼科を受診しましょう。

緑内障の検査

緑内障の主な検査は以下の3つです。

  • ・ 眼圧検査
  • ・ 視野検査
  • ・ 三次元画像解析検査

一つずつ見ていきましょう。

眼圧検査
眼圧とは目の硬さのことをいい、正常は10~21mmHgです。
眼圧が高くなると視神経が圧迫され、視神経線維を障害してしまうので、眼圧検査は緑内障の治療にとって必要不可欠です。

一般的な眼圧検査は、風を当てて測定する非接触タイプです。
眼科で目にプシュッと風を当てる検査をしたことはありませんか?
あれは目の中の圧を測っているのです。

また、緑内障が診断されると眼圧の細かい変動を見る必要があるので、Dr.が診察室内でアプラネーションという接触型の眼圧計で測定してくれます。
風を当てる眼圧計よりも精密に眼圧を測ることが出来るんですね。

視野検査
緑内障の検査には、眼圧検査と並んで重要視されている視野検査があります。

視野検査
※ 画像はハンフリー視野計

簡単に言うと視野検査とは『見える広さを測る検査』です。
緑内障は視神経線維層が障害されるので、その障害に対応する部分に視野の障害が出ます。

  • ・ 視野のどの辺りが障害されているのか
  • ・ 視野障害はどの程度の深さなのか
  • ・ 前回測定より進行しているのか
  • ・ 今の眼圧で視野は進行しないのか(目薬は今のままでいいのか)

などを調べることが出来るので、眼圧検査と合わせて視野検査の経過を見ることは緑内障の治療において大切な指標となります。

視野検査には以下の2種類があります。

  • ・ ハンフリー自動視野計(静的量的視野検査)
  • ・ ゴールドマン視野計(動的量的視野検査)

ハンフリー視野計(静的量的視野検査)
中心約30度以内を測定する自動視野計で、固視目標を一点見ながら周りに感じた光に対してボタンを押す検査です。

ハンフリー視野検査では、初期の視野の感度低下も検出することが出来ます。
光の濃さは濃いものから薄いものまであり感度を測定します。

ゴールドマン視野計(動的量的視野検査)
ゴールドマン視野計は検査技師による手動の視野計で、全体の視野(耳側約100度・鼻側約60度・上側約50度・下側75度が正常)を測る検査です。

ゴールドマン視野検査も固視目標を見ながら行います。
検査技師が外側から内側に向かってゆっくり動かした光が見えたらボタンを押し、視野の広さや欠損部分、感度低下部分を調べます。

末期になるにつれて、周辺部の視野も大きく障害されます。
ゴールドマン視野計では、ハンフリー視野計で検出できない視野の全体像を知ることが出来ます。

患者さん側としては、視野欠損の状態を知ることによって自身の見えにくい部分を把握し、日常生活で留意する点が分かります。

緑内障の予防・治療に対して出来ること

緑内障の予防・治療に対して出来ること

緑内障の予防・治療についての大切な点は以下の3つです。

  • ・ 40歳を超えたら、眼科の健診を必ず受ける
  • ・ 緑内障になったら、眼科を定期的に受診して眼圧や視野を測定し現状を把握する
  • ・ 緑内障の目薬を処方されたら、必ず用法容量通りに点眼する

一度失った視野は取り戻すことが出来ません。
自覚症状に変化がないからといって、治療を自己中断するのは危険です。

緑内障には、今よりも症状を進行させないような治療を選択しますので、医師は眼圧や視野、視神経の形状などから目薬を選択し、経過を追っていきます。
目薬や内服薬でコントロールが難しい場合は手術を選択することもあります。
このあたりは専門医に任せてください。

また、緑内障の経過観察には眼圧検査が必須ですが、眼圧が正常範囲内にあるにも関わらず視野障害が進行する「正常眼圧緑内障」という日本人に多いタイプの緑内障があります。

眼圧が正常だからといって油断できないのも緑内障の特徴です。

まとめ

まとめ

日本での中途失明原因第一位の緑内障について、検査の観点からご紹介しました。

緑内障の初期は自覚症状がないことが多く、ぼやける、何となく見えにくいところがあるといったときには、緑内障が進行しているということが多々あります。

一度欠損した視野は取り戻すことが出来ません。

目の症状がたとえなくても、40歳を超えたら年に一度は眼科検診を受けるようにしましょう。
また日々の健康観察の一つとして、片目ずつつぶっての見え方を時々チェックしておきましょう。

眼科では、視力検査、眼圧検査、視野検査、三次元画像解析検査によって緑内障の診断や治療がされます。

もしも緑内障になってしまったら、眼圧や視野検査結果に合わせて目薬や手術などが選択されます。

決して他人事とは思わずに、視力を失わないためにも眼科を正しく受診してくださいね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

(藤川 真紀)