血液サラサラのお薬を飲んでいる方へ 「お薬きちんと飲めていますか? 」
血液をサラサラにするお薬、ついつい飲み忘れていませんか?
危険な病気になるのを防ぐために、毎日きちんと飲むようにしましょう。
血管が詰まりやすくなっているため、処方された血液をサラサラにするお薬。
「毎日きちんと飲んでくださいね」と医師や薬剤師から説明されたものの、ついつい飲み忘れていませんか?
「飲み忘れても体調は変わらないし…」「毎日忘れずに飲むなんて難しい…」と思っていると、手元には大量に余ったお薬が。
そして次の受診日には、さらにお薬が処方され…思い当たる方もいらっしゃるかもしれません。
血液サラサラの薬(抗血栓薬)を一日飲み忘れたとしても、体調はほとんど変わりません。
しかし一度の飲み忘れをきっかけに、薬を飲まない日が続くと、危険な病気を引き起こしかねません。
そこで今回は抗血栓薬を飲む意義や、飲み忘れたときのリスク、忘れずに飲むための工夫について紹介します。
今回紹介する内容を正しく理解して、血液が詰まって危険な病気になるのを予防しましょう。
- 血液サラサラ薬(抗血栓薬)とは何のために飲むお薬?
- 抗血栓薬には、抗凝固薬と抗血小板薬がある
- ”何のお薬を飲んでいるか”を確認しましょう
- 抗血小板薬
- 抗血小板薬として代表的な薬
- 何の病気を予防するお薬か
- 抗凝固薬
- 抗凝固薬として代表的なお薬
- 何の病気を予防するお薬か
- 血液サラサラ薬を飲むときに注意すること
- 多い副作用は出血
- 手術や歯科治療では休薬が必要
- ほかのお薬との飲み合わせ
- 控えるべき食べ物
- 血液サラサラ薬を飲み忘れるとどうなるの?
- お薬を飲み忘れないための工夫
- お薬を飲み忘れたときの対応
- まとめ
血液サラサラ薬(抗血栓薬)とは何のために飲むお薬?
血液をサラサラにするお薬(抗血栓薬)とは、血管のなかに血のかたまり(血栓)ができるのを防ぐお薬です。
健康な人の血液は体の中をスムーズに流れており、血栓ができることはありません。
しかし、生活習慣病により血液がドロドロになっている方や、心臓がうまく働かず血液の流れが悪い方では、血管内に血栓ができやすくなります。
そしてその血栓が原因で、血栓症といわれる脳梗塞や肺塞栓症、狭心症、心筋梗塞、深部静脈血栓症などの危険な病気が引き起こされます。
このように血栓ができると危険な病気につながるため、きちんと抗血栓薬で予防する必要があります。
抗血栓薬には、抗凝固薬と抗血小板薬がある
抗血栓薬には、血小板のはたらきを抑える「抗血小板薬」と凝固因子のはたらきを抑える「抗凝固薬」の2種類があります。
それぞれ身体の中での作用や、予防する病気が異なります。
ただし血栓の原因として、凝固因子と血小板がお互いに影響しあっていることもあるため、抗凝固薬と抗血小板薬の両方を飲む患者さんもいらっしゃいます。
”何のお薬を飲んでいるか”を確認しましょう
飲んでいるお薬によって、食事、他の薬との飲み合わせ、副作用など注意すべき点が異なります。
抗血栓薬を飲んでいる方は、ご自身が飲んでいるお薬の名前を確認して、
- ・ 何の病気を治す(予防する)ためのお薬か
- ・ お薬を飲む上で気を付けることは何か
- ・ 飲み忘れると、どのようなリスクがあるか
をきちんと把握しましょう。
抗血小板薬
抗血小板薬として代表的な薬
主な抗血小板薬としては、バイアスピリン、プラビックス(クロピドグレル)、エフィエント、ブリリンタ、プレタール(シロスタゾール)、サルポグレラートなどがあります。
バイアスピリンは、頭痛薬のバファリンと成分は同じで、バファリンよりも用量を少なくしたお薬です。
用量が多いと痛み止めの作用をもちますが、用量が少ないと血液をサラサラにする作用をもつ特徴があります。
何の病気を予防するお薬か
抗血小板薬は血小板のはたらきを抑えることで、脳梗塞や心筋梗塞などの動脈血栓症が起きるのを予防します。
血小板による血栓は、心臓から全身に血液を送る動脈で発生しやすいことが知られています。動脈のように血流が早いほど、血小板のはたらきが活性化しやすいためです。
さらに高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病にも罹患している方では、動脈が詰まりやすくなり、血栓症のリスクが高まります。
動脈血栓症としては、脳梗塞や心筋梗塞、抹消動脈血栓症などがあります。
抗血小板薬はこうした動脈血栓症を予防します。
抗凝固薬
抗凝固薬として代表的なお薬
主な抗凝固薬として、昔から使われているワーファリンや、近年登場した直接経口抗凝固薬(DOAC)と呼ばれるプラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナがあります。
ワーファリンは定期的に血液検査をして、細かく用量調節を行います。
食事で注意が必要で相性が悪い食べ物はありますが、お薬の値段は安価です。
DOACは定期的な血液検査は必須ではありません。食べ合わせで問題となるものもありませんが、お薬の値段は高価です。
何の病気を予防するお薬か
抗凝固薬は、血液中の凝固因子のはたらきを抑えることで、深部静脈血栓症や肺塞栓症などの静脈血栓症が起きるのを予防します。
凝固因子による血栓は、心臓に戻ってくる静脈で発生しやすいことが知られています。
静脈のように血流が遅いほど、凝固因子のはたらきが活性化しやすいためです。
不整脈で心臓の拍動がうまくいかない場合や、足を長時間動かさずにいた場合に、血流が滞り静脈血栓症が起きやすくなります。
そして足の静脈にできた血栓が肺まで飛んで、肺塞栓症となることもあります。
他にも、心臓の手術で人工弁をつけた方はその弁の周りに血栓ができやすかったりします。
抗凝固薬はこうした静脈血栓症を予防します。
血液サラサラ薬を飲むときに注意すること
血液をサラサラにするお薬は、今後長く付き合っていくお薬です。
その上で、普段の日常生活で気を付けることがいくつかあります。
治療を医者任せにせず、なぜ注意しなければいけないかを理解して、積極的に治療に取り組んでいきましょう。
多い副作用は出血
血液をサラサラにしすぎて、止血されずに起こる出血には、注意しましょう。
抗血栓薬が抑えている凝固因子や血小板は、本来血管が破れたときに止血するために働くものです。
抗血栓薬が効きすぎると、うまく止血ができなくなります。
脳出血などの重大な出血が起きる前に、
- ・ 歯磨きすると、歯茎から血が出た
- ・ 突然鼻血が出るようになった
- ・ 尿や弁の色が、赤や黒っぽい色になった
- ・ ぶつけていないのに、青アザができた
上記のような小さな出血を、早めにご自身で気づくことが大切です。
気づいたらすぐに医師または薬剤師に連絡するようにしましょう。
手術や歯科治療では休薬が必要
出血を伴う手術や歯科治療を行う場合には、止血が必要なため抗血栓薬を休薬する必要があります。
手術を行うときや歯科を受診するときは、主治医に「血液サラサラのお薬を飲んでいる」と事前に伝えましょう。
手術といっても、突然倒れて救急車に運ばれて緊急手術となることがあります。
そのときに医師に抗血栓薬を伝えられなかったら非常に危険です。
自分が飲んでいるお薬はすぐに伝えられるよう覚えておきましょう。
ほかのお薬との飲み合わせ
ワーファリンを飲んでいる方は、特に他のお薬との飲み合わせに注意が必要です。
ワーファリンの効果を強くしすぎてしまう抗生物質や解熱鎮痛剤、逆に効果を弱めてしまうビタミンK製剤や抗てんかん薬などがあります。
医師はワーファリンの用量を調節して、それらの飲み合わせに対応するため、きちんと医師や薬剤師に飲んでいるお薬を伝えておきましょう。
控えるべき食べ物
【 ワーファリンを飲んでいる方は、納豆などに注意 】
ワーファリンを飲んでいる方は、納豆などのビタミンKを含む食べ物を摂ると薬が効きにくくなることがあります。
ワーファリンはビタミンKの働きを抑えることで、血液サラサラの効果を発揮するお薬です。そのため食べ物からビタミンKを大量に摂ると、せっかく飲んだお薬の効果が発揮されにくくなってしまいます。
ビタミンKを多く含む食べ物として、次のようなものがあります。
- ・ 納豆
- ・ クロレラ
- ・ 青汁
【 シロスタゾールまたはプレタールを飲んでいる方は、グレープフルーツに注意 】
シロスタゾールまたはプレタールを飲んでいる方は、グレープフルーツジュースを飲むと、薬が効きすぎることがあります。
これらのお薬の代謝にかかわる酵素の働きをグレープフルーツの成分が抑えてしまうためです。
お薬が代謝されずに体内に残り続けることで、効きすぎてしまいます。
血液サラサラ薬を飲み忘れるとどうなるの?
継続して薬を飲み忘れると、突然脳梗塞や心筋梗塞を発症するリスクが高まり、治療をしても麻痺や死亡に繋がる可能性があります。
血液サラサラ薬を飲み忘れると、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症のリスクが高まります。
これらの病気で怖いのが、発症するまで症状はなく油断しやすいことで、突然発症します。
また発症後は、頑張って治療をしても麻痺などの後遺症が残ったり、死亡につながることもあります。
例えば脳梗塞になると、言葉を発しにくくなったり、手足がうまく動かせなくなったり、介護がないと生活ができない状態になったりします。
このように致命的な状態にならないためにも、医師の指示通りにきちんとお薬を飲むようにしましょう。
お薬を飲み忘れないための工夫
飲み忘れを防ぐための便利グッズを紹介します。
危険な合併症のリスクがあると理解できていても、つい忘れてしまうこともあると思います。
無理なく治療を続けるために、役立つグッズをぜひ活用してみてください。
・スマートフォンのアプリ
毎日決まった時間に、アラームで薬を飲むタイミングを知らせてくれます。
また、リマインダーとしての機能だけでなく、生活習慣病の患者さんにとって重要な血糖値や血圧、体重などを記録できる機能もついています。
・お薬手帳やカレンダーを活用
薬局でもらうお薬手帳やカレンダーに記録することで、毎日の服用状態を視覚的に確認できます。
通院時に持参して、医師や薬剤師にも、薬がきちんと飲めているかを確認してもらいましょう。
・ピルケース
一日ごとや飲むタイミングごとで仕切られた薬のケースです。
その日に飲む薬を一目で確認でき、お薬の服用状況が分かりやすいです。
・分包する
薬を飲むタイミングごとに、ビニールで分包する方法で、薬局で頼めます。
何種類も飲む薬がある方は、薬の取り違えも防ぐことができるのでおすすめです。
・2種類飲んでいる場合、1剤にまとめた配合剤に変更してもらう
一日に何錠も薬を飲むのは大変です。
抗血栓薬には、いくつか配合剤があるため、変更できないか医師に相談してみましょう。
お薬を飲み忘れたときの対応
気づいたときに、できるだけ早めに飲むようにしましょう。
気づくのが遅く翌日に近い場合は、翌日にその日の分のお薬を飲みましょう。
決して2日分を一気に飲んではいけません。
迷ったときには、かかりつけの医師または薬剤師に確認するようにしましょう。
まとめ
今回は血液サラサラの薬を飲んでいる方に向けて、その薬を飲む意義や、飲み忘れたときのリスク、飲み忘れないための工夫について紹介しました。
一度飲み忘れても、身体に悪い症状はみられませんが、飲み忘れが続き、血栓症を発症すると、命にもかかわります。
血液サラサラの薬は、今後も血栓症を予防するために長く付き合っていくお薬です。
今回紹介した飲み忘れないための工夫もとりいれながら、きちんと薬を飲むようにしましょう。
(見元 美佐)
-
国立循環器病情報センター、循環器病情報サービス「血液をさらさらにする薬」(2021年4月18日アクセス)
[ http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/blood/pamph80.html ]