COVID-19に関する最新知見
新型コロナウイルスは、2019年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19:coronavirus disease 2019)とも言う感染症です。
2020年1月24日現在で、全世界における感染者は9874万人、死者は212万人と増加し続けています。
これまで、ワクチンやマスク着用、アルコール消毒、3密などさまざまな感染症対策が議論されてきました。
ただ、市販の製品の中には、安全性情報や製品の品質が不透明なものも多く存在します。
使ってみたら肌荒れした、商品の劣化が激しかったなど、トラブルを経験した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本日は、ウイルスの特徴と基本的な対策について、現時点での最新知見をまとめてお伝えします。
マスメディアからの情報収集に加えて、サイエンスの学びとなれば幸いです。
- 【1】ウイルスは、どうやって増えるの
- 【2】新型コロナウイルスの感染症状
- 【3】感染リスクは、年齢と持病に左右される
- 【4】COVID-19の感染対策
- 4-1. 基本は、外出時のマスク着用
- 4-2. アルコール消毒は、ウイルスを不活化する
- 4-3. それ以外のウイルス対策
- 【5】その製品は、国や行政の承認を受けていますか?
- さいごに
- 参考文献
【1】ウイルスは、どうやって増えるの?
まず、ウイルスの増殖についてお話します。
ウイルスは、自分で増殖することができません。
代わりに、動物やヒトの生きた細胞(宿主)に感染し、その中で増殖します。
近畿大学医学部の東賢一らの研究報告(※9) は、患者と医療従事者が接するシミュレーションを行い、COVID-19の主要な感染経路は飛沫感染、次に接触感染であることを報告しています。
また、医療現場では医療従事者と患者ともにサージカルマスクなどを着用し、適切な換気状態を保つことが重要だと示しました。
一方、空気感染はほとんど無いと言われています。
これを日常生活に置き換えると、ウイルス感染者が咳やくしゃみをしたり、誰かと近距離でしゃべったり、同じ皿から食べ物を取り分けたりするのは、直接的・間接的な「飛沫感染」となります。
また、新型コロナウイルスが付着したもの(例:公共の手すり、蛇口、ボタンなど)に触れた手で、目や口や鼻を触ることでも、感染リスクが高くなることが知られています。
もちろん、飲み物の回し飲みやキスなど唾液、衣類、器具による直接経路でも感染します。
パンデミックがなかなか収まらない原因には、公共交通機関やオフィスなど、不特定多数の人が利用している場所に行かざるを得ないために、自己予防策では不十分だったケースも該当するでしょう。
また、街中には咳や発熱など明らかな症状がないのに感染している状態(不顕性感染)の人も多く存在します。
「症状があってもこれくらいなら」と思って、活動する方も実は相当数いるかもしれません。
【2】新型コロナウイルスの感染症状
原因ウイルスであるSARS-CoV-2に感染すると、初期症状として発熱や咳、筋肉痛、悪寒といった風邪のような症状がみられますが、さらに「味やにおいが分からなくなる」のが特徴的です。
芸能人の方でも、塩がしょっぱく感じない、喉の違和感が残っているなど、新型コロナウイルスによる体の不調を訴えているのは、記憶に新しいと思います。
大半の患者さんは、数週間も経てば回復するため、あまり重症化しないと言われています。
しかし、20歳代の方でも3週間以上だらだら発熱が続いたり、呼吸困難感を感じたりする方は決して少なくありません。
「2週間も寝たら直る風邪みたいなもの」という考えは誤りです。
一部の患者さんは、重症化すると肺炎のような呼吸困難に見舞われ、死に至る場合もあります
【3】感染リスクは、年齢と持病に左右される
次に、新型コロナウイルスにかかりやすい人の特徴について説明します。
現時点では、重症化のリスクは年齢と健康状態によると言われており、高齢者ほどリスクが高くなります。これは、年を取るにつれて心肺機能や免疫力が低下し、ウイルス耐性が弱くなることが考えられます。
また、重い心臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、2型糖尿病、かま状赤血球症、肥満などの持病がある人も重症化しやすい点も、注意が必要です。
もちろん、睡眠不足や栄養の偏りといった生活習慣の乱れも、感染リスクにつながります。
健康な状態では、細菌やウイルスが体に侵入しても体外へ排出することができますが、ストレスや持病などで体力が落ちていると、炎症が起きやすくなります。
反対に、健康な人が無症状で感染しており、人にうつすこともあります。
PCR検査の結果が陽性でも、風邪のような初期症状がまったく見られない(いわゆる無症状)の方も存在することから、無自覚に感染リスクを広めてしまうこともあります。
よって、感染拡大を鎮めるには、周囲の人と物理的な距離をとることが有効だと言われているのです。
ちなみに、感染者からペット、動物から人に移る可能性もあるようですが、明確な根拠は示されていません。
【4】COVID-19の感染対策
4-1. 基本は、外出時のマスク着用外出時には、必ずマスクを着用しましょう。
マスクを選ぶ際には、家庭用か医療用か、自分に合ったサイズかどうかに注目します。
ウイルスは、花粉や飛沫、細菌よりも小さいため、通常の家庭用マスクでは予防することが難しい生物です。
マスクの種類によって防御範囲が異なることを覚えておきましょう。
マスクの種類 | 防御範囲 |
---|---|
花粉症対策用 | 約30μm以上の粒子 |
風邪・ウイルス対策用 | 約1.7~3μm以上の粒子 |
PM2.5用 | 約0.1μmの粒子 |
N95マスク(Particulate Respiration Type) 主に医療従事者や患者用 |
約0.3μm以上の粒子を捕集 |
また、マスクは自分の顔に合った形状のものがベストです。
鼻と口は感染リスクが高い部位なので、鼻、口から顎、両側の頬のラインに隙間ができないマスクが有用です。
子供は子供用のサイズを、小柄な女性などは女性用のサイズを着用します。
フェイスシールドを使用する場合は、おでこ部分にクッションがあるものや、顔の横から風通しがよくなっていないものを選ぶことをおすすめします。
マウスシールドの効果は、サージカルマスクよりも低いとされているため、十分な注意が必要です。
自分は対策をしているから大丈夫!という過信は、時に命取りになります。
第三者に感染させないためにも、しっかりと感染症対策を行うことが重要です。
マスク以外に最も有用だとされるのは、アルコール消毒です。
アルコールは、ウイルスの最も外側にある「エンベロープ」という膜をターゲットにして、ウイルスを不活化させる効果を持っています。
エンベロープは脂質と糖タンパク質から構成される膜で、COVID-19も持っています。
脂質成分はエタノールなどのアルコール類、ほか一部の有機溶媒に溶けることが知られているため、COVID-19にもアルコール消毒が有用だと言われているのです。
Kampfらの研究では、ヒトおよび動物のCOVID-19に対する消毒薬の研究 (22例) を統合的に踏まえて、以下の化学物質がウイルス対策に有用であることを明らかにしました(※3)。
【COVID-19に有効な化学物質、薬品】(※3)
1分以内に不活化できるとされるもの
- ・62~71% エタノール
- ・0.5% 過酸化水素
- ・0.1% 次亜塩素酸ナトリウム
※ 0.02~0.5% 塩化ベンザルコニウムおよび0.02%グルコン酸クロルヘキシジンは効果が低い
※ 56℃、30分以上の加熱もCOVID-19の不活化に効果的
ただ、ノロウイルスのような風邪ウイルスはエンベロープを持っていないため、アルコール消毒が効かないので、薬による治療となります。
最近では、消毒アルコール製品のほかにも、ウイルスの感染予防をうたったミストやジェルが販売されています。
例えば「ヒドロキシプロピルキトサン」という成分は、花粉やハウスダストなどのアレルゲン、インフルエンザウイルスなどのウイルス、PM2.5、PM10からなる群のうち少なくとも1種類の空気中に存在する有害物質の付着防止剤として報告されています(※5)。
また「ワセリン」を配合して、ウイルスの付着をバリアする製品もあります。
ここで気を付けていただきたいのは、いずれも「ウイルスを死なせる(不活化させる)わけではない」という点です。
先ほどウイルスの構造をご紹介しましたが、ウイルスは外側に脂質膜を持っています。
私たちの体の細胞も脂質膜で覆われていますし、そこに脂溶性の成分を塗れば、むしろウイルスが長く留まりやすい可能性も否定できません。
単純な手洗いがウイルス量を減少させますし、石鹸を使うことによりその効果はさらに上がります。頻回な手洗いが推薦される根拠です。
【5】その製品は、国や行政の承認を受けていますか?
最後に、信頼できる製品の選び方についてお話します。
あまり大々的に報道されませんが、規制当局の許可を得ていないウイルス対策製品が問題になっています。
例えば、iThrive.health社はCOVID-19を予防または治療するなどと独自にうたって、ビタミンなどを含む製品を販売していました。
しかし、本製品は米国食品医薬品局 (U.S. Food and Drug Administration; FDA) や 米国連邦取引委員会 (Federal Trade Commission; FTC) の許可を得ずにインターネットやSNSで広告を打っていたのです。
これを受けて2020年12月10日、FDAとFTCはこの製品に対して警告文を発表し、広告収入を得ているAmazonアフィリエイトに広告を停止するよう要求しました。
これは、MADE IN JAPANの製品であっても注意すべき点です。
虚偽の情報をもとに製品を継続使用した場合、重篤な副作用を生じるリスクも考えられます。
有名ブランドだから。
インフルエンサーが紹介していたから。
好きな俳優が使っている製品だから。
興味を持った製品は、まず自分の目で安全性を確認してみましょう。
余力のある方は、有効成分、ウイルスに効くメカニズムなど知っておくのもいいですね。
「塗ってウイルスをバリア」「ミストでウイルス除去」など、商品名やキャッチコピーを鵜呑みにしないことが大切です。
さいごに
今回は、COVID-19の特徴や感染予防対策についてお伝えしました。
マスクをしているから大丈夫。
アルコールを振りかけたから大丈夫。
こうした思い込みは、ときに自分や周りの人を危険に晒してしまいます。
さらに現代では、ECサイトやフリマを活用した買い物も主流となってきました。
本来なら生産者と販売者の両方が管理すべき情報も、個人で解釈しなければなりません。
なぜその製品がウイルスに有効なのか、配合成分や使用方法も含めて考える習慣をつけていきましょう。
今回のお話はインフルエンザや風邪の予防にも有益ですので、引き続き実践していただければ幸いです。
※ 本内容は、科学的根拠をもとに個人的見解をまとめたものです。COVID-19に関する最新情報は、下記参考サイトや厚生労働省のHP (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html) をご確認ください。
(KOMEKO)
- (※1) 米国FDA: Warning Letters (U.S. Food and Drug Administration), 2020年12月10日
[ https://www.fda.gov/consumers/health-fraud-scams/fraudulent-coronavirus-disease-2019-covid-19-products#Warning%20Letter%20Table ] - (※2) 高野友美ほか「獣動物とヒトのコロナウイルス-2019新型コロナウイルスの流行を受けて-」
[ https://www.kitasato-u.ac.jp/vmas/download/coronavirus_200220lecture.pdf ] - (※3) G. Kampf, et al. Persistence of coronaviruses on inanimate surfaces and their inactivation with biocidal agents. Journal of Hospital Infection (2020). Volume 104, Issue 3, Pages 246-251.
- (※4) (一社)日本衛生材料工業連合会:全国マスク工業会「不織布マスクの性能と使用時の注意」
[ https://www.env.go.jp/air/osen/pm/info/cic/attach/briefing_h25-mat04.pdf ] - (※5) 知財ポータルサイトより特許6198799
[ https://ipforce.jp/patent-jp-B9-6198799 ] - (※6) UpToDate(R)「患者教育:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の概要(簡易)」
[ https://www.uptodate.com/contents/1126696 ] - (※7) 中外製薬「からだとくすりのはなし > からだのしくみ > 肺」
[ https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/karada/pdf/karada008.pdf ] - (※8) 山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信
[ https://www.covid19-yamanaka.com/cont4/14.html ] - (※9) A. Mizukoshi, C. Nakama, J. Okumura, and K. Azuma. Assessing the risk of COVID-19 from multiple pathways of exposure to SARS-CoV-2: Modeling in health-care settings and effectiveness of nonpharmaceutical interventions. Environment International. Vol. 147, 2021.
[ https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0160412020322935?via%3Dihub ]