腫瘍マーカーとは?知っておきたい意義と使い方の基本をわかりやすく紹介

「腫瘍マーカーとは何のこと?陽性なら”がん”という意味なの?」
そのような不安や疑問を抱えて、このキーワードを検索した方も多いのではないでしょうか。腫瘍マーカーは名前のイメージから「がんを見つける検査」と思われがちですが、実際にはがんの有無を直接診断する検査ではなく、あくまで補助的に用いられる指標です。

結論として、腫瘍マーカーは「がんの可能性を総合的に判断する材料のひとつ」であり、単独で診断が決まるものではありません。その特性を正しく理解することで、結果に一喜一憂しすぎず、落ち着いて健康管理に役立てることができます。

この記事では、

  • ・ 腫瘍マーカーとは何か
  • ・ どんな意義があり、どんなときに役立つのか
  • ・ 誤解されやすいポイントや、取り扱い方の注意点

をわかりやすく解説します。

初めて腫瘍マーカーについて調べている方でも安心して読み進められるよう、わかりやすく解説しています。ぜひ、この機会に正しい知識を身につけましょう。

腫瘍マーカーとは?まず知っておきたい基本と仕組み

腫瘍マーカーとは?まず知っておきたい基本と仕組み

腫瘍マーカーとは、がん細胞やがんに伴う体内環境の変化によって産生される物質の総称です。血液や尿で測定され、蛋白質・酵素・ホルモン・糖鎖抗原などさまざまな種類があります。

日本臨床腫瘍学会の定義では、腫瘍マーカーは「腫瘍の存在や進行状態を反映して血中や体液中に出現する物質」とされています。ただし、がん細胞だけが産生するわけではなく、正常細胞からも微量に産生されることがあります。このため、腫瘍マーカーの値が上昇しても、必ずしもがんが存在するとは限りません。

腫瘍マーカーはどのように体内で変化するのか
がん細胞が増殖すると、細胞表面から分泌される物質や、細胞が壊れる際に放出される成分が血液中に増加します。これが腫瘍マーカーとして検出される仕組みです。がんの種類や進行度によって、産生される腫瘍マーカーの種類や量が異なることが知られています。

例えば、大腸がんではCEAやCA19-9が上昇しやすく、肝細胞がんではAFPやPIVKA-IIが上昇する傾向があります。ただし、これらはあくまで「傾向」であり、必ず上昇するわけではありません。

偽陽性とは?腫瘍マーカーが上昇するのはがんだけ?
腫瘍マーカーはがん以外の病態でも上昇することがあります。これが「偽陽性(ぎようせい)」と呼ばれる現象です。

主な腫瘍マーカーとがん以外で上昇する原因については以下の通りです。

腫瘍マーカーがん以外で上昇する主な原因
CEA 慢性肝炎、肝硬変、慢性膵炎、肺結核、喫煙、加齢など
CA19-9 胆管炎、慢性の膵炎や肝炎、閉塞性の黄疸、卵巣嚢腫など
AFP 慢性肝炎、肝硬変、急性肝炎、劇症肝炎の回復期、卵黄嚢腫など
PSA 前立腺肥大症、前立腺炎、尿道刺激(内視鏡カテーテルなど)
CA125 子宮内膜症、子宮筋腫、良性卵巣嚢腫、月経周期、妊娠など
SCC 皮膚疾患、肺炎、気管支炎など

腫瘍マーカー単独でのがん検診は推奨されていません。これは偽陽性が多く、不必要な精密検査や心理的負担を招く可能性があるためです。

また、腫瘍マーカーは年齢や性別、体質によっても変動することが知られており、同じ値でも人によって意味合いが異なる場合があります。

例えば、CEAは加齢とともに自然に上昇する傾向があります。また、女性特有のマーカーであるCA125は、月経周期や妊娠などでも変動することが報告されています。
このような理由から、腫瘍マーカーの結果は「その人の経時的な変化」を見ることが重要とされています。

腫瘍マーカーとは?まず知っておきたい基本と仕組み

腫瘍マーカーの意義|何のために調べるのか?

腫瘍マーカーは、がんの診断を確定する検査ではありませんが、治療の経過を見守るうえで重要な役割を担っています。では、具体的にどのような場面で役立つのでしょうか。ここでは、腫瘍マーカーが医療現場でどのように活用されているのか解説します。腫瘍マーカーの意義を正しく理解することで、検査結果に対する不安を軽減し、冷静に向き合うことができるようになります。

PSA以外の腫瘍マーカーが早期発見に使えないのはなぜ?
一般的に、がんの早期発見には画像検査(CT・MRI・内視鏡など)や病理検査が必要とされています。腫瘍マーカーは早期がんでは上昇しないことが多く、がんが小さいうちは検出感度が低いという限界があります。

多くの腫瘍マーカーは進行がんで陽性率が高くなる一方、早期がんでは陽性率が低いことが知られています。このため、腫瘍マーカー単独でのスクリーニングは推奨されていません。

唯一の例外としては、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAが比較的早期から上昇傾向を示すため、早期発見に活用されることがあります。

腫瘍マーカーが治療効果の判定に役立つ仕組み
腫瘍マーカーが最も有用とされるのは、治療の効果判定です。手術や化学療法、放射線治療などによってがんが縮小すると、腫瘍マーカーの値も低下することが多いため、治療が奏功しているかどうかの指標として用いられます。

治療効果判定における腫瘍マーカーの変化パターンは以下の通りです。

腫瘍マーカーの変化示唆される状態
治療後に低下 治療が有効である可能性が高い
治療後も高値のまま がんが残存している可能性

例えば、大腸がんの術後にCEAが低下すれば、手術によってがんが取り除かれた可能性が高いと判断されます。逆に、治療後も値が下がらない場合には、がんが残存している可能性が考慮されます。

再発や進行のモニタリングとしての役割
治療後の経過観察においても、腫瘍マーカーは重要な役割を果たします。定期的に測定することで、再発の早期発見につながる可能性があるためです。

ただし、腫瘍マーカーが上昇したからといって必ず再発しているわけではなく、画像検査などで確認する必要があります。また、マーカーが正常値であっても再発していないとは限らないため、総合的な判断が求められます。

腫瘍マーカーの数値だけで判断できない理由
腫瘍マーカーはあくまで「参考値」であり、その数値だけでがんの有無や進行度を確定することはできません。必ず画像検査や病理検査と組み合わせて総合的に判断されます。

また、同じマーカーでも複数のがんで上昇することがあるため、「どの臓器のがんか」を特定することも困難です。例えば、CEAは大腸がん以外にも肺がんや胃がん、乳がんなどでも上昇することが知られています。
そのため、必ず他の検査結果と照らし合わせて判断することが重要です。

腫瘍マーカーの種類|よく使われる代表的な項目を紹介

腫瘍マーカーの種類|よく使われる代表的な項目を紹介

腫瘍マーカーには多くの種類があり、がんの部位によって使い分けられています。ここでは、臨床現場でよく用いられる代表的な腫瘍マーカーを、がんの種類ごとに紹介します。

がんの種類主な腫瘍マーカー
甲状腺がんCEA
肺がんCYFRA、CEA、ProGRP、NSE
食道がんSCC、CEA
胃がんCEA、CA19-9
大腸がんCEA、CA19-9
肝臓がんAFP、PIVKA-II、AFP-L3分画
胆道がんCA19-9、CEA
膵臓がんCA19-9、SPan-1、DUPAN-2、CEA、CA50
腎盂・尿管がんNMP22
膀胱がんNMP22、BTA
前立腺がんPSA
乳がんCEA、CA15-3
子宮頸がんSCC、CA125、CEA
卵巣がんCA125

【引用:国立がん研究センター がん情報サービス 腫瘍マーカー検査とは

各がんに関連して使われる腫瘍マーカーには、それぞれに特徴があり、臨床での役割も異なります。腫瘍マーカーは「がんに特異的に上昇するもの」から「複数の臓器で上昇し得るもの」まで幅広く、感度や特異度にも差があります。そのため、個々のマーカーの特徴を理解することが、結果を正しく解釈するうえで重要です。

前立腺がん(PSA)
臓器特異性が比較的高く、前立腺がんで上昇しやすいマーカーです。ただし、前立腺肥大症や炎症でも高くなるため、診断確定にはほかの検査が必須です。
治療後の経過観察には特に有用とされています。

肝臓がん(AFP・PIVKA-II、AFP-L3分画)
肝細胞がんで使用される代表的なマーカーです。肝炎・肝硬変でも変動するため、単独では判断できず、画像検査とセットで評価されます。
複数のマーカーを組み合わせることで精度が高まりやすいとされています。

消化器がん(CEA・CA19-9)
大腸がん・胃がん・膵がんなど幅広い消化器がんで上昇することがあります。臓器特異性は高くないため、どの部位の異常かを特定する目的には向きません。
診断よりも、治療効果や再発の経過を追う時に役立つ場面が多いとされています。

肺がん(CYFRA・NSE・ProGRP など)
がんの組織型(小細胞/非小細胞)によって上がりやすいマーカーが異なります。早期の肺がんでは上昇しないこともあり、マーカーだけで判断することはできません。
他の検査結果と組み合わせて使う補助的な指標として位置づけられています。

卵巣がん(CA125)
卵巣がんで高くなることがありますが、子宮内膜症や月経などでも上がることがあるため、慎重な解釈が必要です。
治療後の推移を見る際に役立つケースがあります。

いずれの腫瘍マーカーも、「この値だけでがんと断定できるものは存在しない」という点が大前提です。代表的なマーカーの特徴を理解することで、どの場面で役立つのか、どこに限界があるのかが明確になります。
腫瘍マーカーは、検査結果の推移や症状、画像検査などと組み合わせることで初めて価値を持つ補助的な指標であることを念頭に置いて活用していく必要があります。

腫瘍マーカーの使い方と取り扱い方の基本

腫瘍マーカーの使い方と取り扱い方の基本

腫瘍マーカーの数値が基準値を超えていたら、「がんに違いない」と不安になる方は少なくありません。しかし、実際の医療現場では、腫瘍マーカーだけで診断が確定することはなく、必ず他の検査と組み合わせて総合的に判断されます。

ここでは、腫瘍マーカーが上昇した場合にどのような検査が追加されるのか、経過観察ではどのように数値を読み解くのか、そして「正常値だから安心」とは限らない理由について、具体的に解説していきます。

腫瘍マーカーが「診断確定」にならない理由
前述のとおり、腫瘍マーカーは感度(がんがある時に陽性になる割合)と特異度(がんがない時に陰性になる割合)の両方が十分ではないため、診断確定には用いられません。確定診断には病理検査が必須です。

腫瘍マーカーはあくまで「疑いを持つきっかけ」や「経過を追う指標」として位置づけられています。

腫瘍マーカー上昇時に必要な追加検査とは?
腫瘍マーカーが基準値を超えた場合、以下のような追加検査を行います。

  • ・ 再検査:測定誤差や一時的な変動でないか確認
  • ・ 画像検査:CT・MRI・超音波・PET-CTなどで異常の有無を確認
  • ・ 内視鏡検査:消化器系が疑われる場合
  • ・ 生検(組織診断):画像で異常が見つかった場合、最終的な確定診断のために実施

また、良性疾患や生活習慣の影響を除外するため、血液検査の再検査や他の検査項目との組み合わせも検討されます。

経過観察での使い方
腫瘍マーカーは一度の測定値よりも、経時的な変化(トレンド)を見ることが重要です。同じ検査施設で定期的に測定し、値の推移を追うことで、再発や進行の兆候を早期に捉えることができます。

腫瘍マーカーの値に変化が見られた場合には、担当医が総合的に判断し、必要に応じて精密検査や再検査が検討されます。自己判断せず、必ず医師に確認することが大切です。

正常値でも安心とは限らないケース
腫瘍マーカーが正常範囲内であっても、がんが存在する可能性はあります。特に早期がんや、腫瘍マーカーを産生しないタイプのがんでは、マーカーが上昇しないことがあります。

このため、腫瘍マーカーが正常値だからといって「がん検診を受けなくてよい」ということにはなりません。定期的ながん検診や、症状がある場合の医療機関受診は引き続き重要です。

腫瘍マーカー検査を受けるときの注意点

腫瘍マーカー検査を正しく活用するには、結果の見方や検査の組み合わせについて知っておくことが大切です。ここでは、検査を受ける際に押さえておきたいポイントと、結果に不安を感じたときの対応方法を解説します。

一回の結果で判断しないこと
腫瘍マーカーの値は、体調や検査のタイミング、測定誤差などによって変動することがあります。一度の異常値だけで過度に心配せず、再検査や他の検査との組み合わせで総合的に判断することが大切です。

複数のマーカーを組み合わせて診る理由
がんの種類や進行度によって上昇するマーカーが異なるため、複数のマーカーを組み合わせて測定することで、より正確な情報が得られる場合があります。また、一つのマーカーだけでは判断が難しいケースでも、複数のマーカーの組み合わせで精度が向上することが報告されています。

結果に不安があるときの相談先
腫瘍マーカーの結果について不安や疑問がある場合には、まずは検査を受けた医療機関の医師に相談することが推奨されます。必要に応じて、専門医(腫瘍内科医・各臓器専門医など)への紹介や、セカンドオピニオンの利用も検討できます。

また、がん相談支援センター(全国のがん診療連携拠点病院に設置)でも、がんに関する不安や疑問について無料で相談が可能です。

腫瘍マーカーを正しく理解して不安を減らそう

腫瘍マーカーを正しく理解して不安を減らそう

腫瘍マーカーとは、がん細胞や体内環境の変化によって産生される物質であり、血液や尿から測定されます。しかし、がんの有無を直接診断するものではなく、あくまで補助的な指標です。
一度の結果だけで判断せず、経時的な変化や他の検査結果と合わせて総合的に評価することが重要です。
また、腫瘍マーカーが正常値であっても、定期的ながん検診や健康診断を継続し、症状がある場合には速やかに医療機関を受診するようにしましょう

正しい知識を持つことで、腫瘍マーカーを過度に恐れることなく、健康管理の一環として上手に活用することができます。

(柊 こはる)

参考文献
  • 国立がん研究センター がん情報サービス 腫瘍マーカー検査とは
    [ https://ganjoho.jp/public/dia_tre/inspection/marker.html ]
  • 国立がん研究センター がん情報サービス がん検診について
    [ https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr01.html ]
  • 医療法人EMU 森外科医院 腫瘍マーカー
    [ https://www.morigeka.net/tumor-marker/ ]
  • 臨床検査医学会 腫瘍マーカーの見方
    [ https://www.jslm.org/books/guideline/05_06/298.pdf ]
  • Midtown Clinic 知っているようで知らない『腫瘍マーカー検査』ってどんな検査?
    [ https://www.mtc-nihonbashi.jp/column/sickness/1307/ ]
  • 広島市医師会だより 腫瘍マーカーの測定 ~その臨床的意義と効率的活用法~
    [ http://www.labo.city.hiroshima.med.or.jp/wp-01/wp-content/uploads/2013/12/center201204-04.pdf ]
  • 国立がん研究センター がん情報サービス がん検診について
    [ https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr01.html ]
  • 国立がん研究センター がん情報サービス 「がん相談支援センター」とは
    [ https://ganjoho.jp/public/institution/consultation/cisc/cisc.html ]