不眠の悩みを解決する11個の改善法|健康的な眠りを取り戻すための徹底ガイド

不眠に悩んでいる方は少なくありませんが、その改善にはまず日々の生活習慣を見直すことが重要です。

この記事では、厚生労働省が発表した「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」をもとに、実践しやすい不眠改善法を11個紹介します。起床・就寝時間を一定に保つことや、睡眠環境を整える、リラックスできる習慣を取り入れるなど、日常生活に簡単に取り入れられる方法ばかりなのでぜひ参考にしてください。

さらに、根本的な改善には医療機関の受診が重要ですので、その診療科についても詳しく紹介しています。習慣を整えて、質の高い睡眠を取り戻しましょう。

【まずは実践してみよう】不眠の改善法

【まずは実践してみよう】不眠の改善法

不眠に悩んでいる方でも、日常生活に少し工夫を加えることで、睡眠の質を改善できる可能性があります。

2023年に厚生労働省が発表した「健康づくりのための睡眠ガイド」によれば、適切な睡眠環境を整え、規則正しい生活を心がけることが不眠改善につながるとされています。ここでは、誰でも取り組める具体的な改善方法をご紹介します。まずは、できることから少しずつ実践してみましょう。

起床・就寝時間を一定に保つ
毎日同じ時間に起床し、同じ時間に就寝する規則正しい生活リズムを保つことは、体内時計を安定させ、睡眠の質を向上させるために重要です。

「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」によると、週末に長時間寝過ぎる、いわゆる「寝だめ」をすることや、平日の就寝・起床時間が不規則になることは、体内時計の乱れを引き起こし、不眠を悪化させる要因になります。まずは、平日も週末もなるべく同じ時間帯で睡眠を取れる生活に整えることを目指しましょう。

寝室を心地良い睡眠環境に整える
寝室の環境は、睡眠の質に大きな影響を与えます。

「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」では、寝室の温度を暑すぎず寒すぎない適温に保つことが重要だと指摘されています。夏はエアコンを適切に使用し、冬は寝具によって寝床内を暖めつつ、暖房で室温が18℃以上になるよう設定しましょう。

また近年の研究によって、寝ている間は低い照度の光でも中途覚醒時間を増加させ、睡眠の効率を下げることが報告されていることから、寝室の照明にも配慮することは重要と考えられています。夜はできるだけ照明を落とし、遮光カーテンで外部から入る光を遮るようにしましょう。

さらに、騒音が少ない静かな環境を作り出すことも重要です。寝具の選び方も、硬すぎず柔らかすぎないものを選ぶことで、心地よく眠ることができます。

適度な運動習慣を身につける
適度な運動は、深い眠りを促すために効果的です。

「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」では、中強度〜高強度の運動、特に有酸素運動が推奨されています。とはいえ、普段あまり運動をしない人がいきなり負荷の大きい運動を始めると、怪我の危険性もあることから、無理をせず自分のペースで始めることが重要です。

例えば、ウォーキングや軽いジョギング、ヨガなどの運動から、オフィスでの移動は階段を使う、一駅分歩く、家事をする時に少し負荷をかけるなどでも十分効果が期待できます。

ただし、就寝直前の激しい運動は逆に身体を覚醒させてしまうことがあるため、夕方まで(目安:就寝2〜4時間前まで)に運動を済ませるのが理想です。

就寝1〜2時間前に入浴する
「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」によれば、就寝前に入浴をすると手足の血管が拡張して入浴後の熱放散を促進し、眠りに入りやすくなるとされています。

入浴は就寝1〜2時間前が最適です。40℃程度のぬるめのお湯に10〜15分ほど浸かることで、リラックス効果も得られます。入浴後は、リラックスした状態を維持し、就寝準備を整えると良いでしょう。

就寝前はリラックスする
就寝前のリラックスは、質の良い睡眠に欠かせません。

具体的には、軽いストレッチや深呼吸、瞑想が効果的です。これらのリラックス法は、副交感神経を活性化させ、心身を落ち着かせる効果があります。また、ゆったりとした音楽、アロマなども入眠を促し、眠りの質を高める可能性が示されています。

少なくとも、寝床に入る1時間前には家事や仕事、勉強から解放され、このようなリラックスタイムを設けるようにしましょう。

就寝前はデジタルデトックスする
デジタル機器の使用は、就寝前に控えることが推奨されています。

「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」では、スマートフォンやパソコン、テレビなどのスクリーンから発せられるブルーライトは、脳を覚醒させ、メラトニンという睡眠ホルモンの分泌を妨げるとされています。

就寝前1〜2時間は、できるだけスマートフォンやタブレット端末の使用を避けるようにしましょう。

夜食は控える
夜食を食べると、消化にエネルギーが使われ、睡眠が妨げられることがあります。

「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」では、夜遅い時間の食事は体内時計を狂わせ、翌朝のスッキリ感や「よく寝た」という満足感を低下させるとされています。

さらに、夜食や間食の摂り過ぎは、糖尿病や肥満の原因となり、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を招くリスクを高めることも報告されていることから、規則正しい食事の習慣も大切といえます。

どうしても夜間に空腹感が気になる場合は、消化に良い軽いものを摂るようにしましょう。これにより、夜に食事をとる影響を最小限に抑えることができます。

アルコールを睡眠薬の代わりにしない
アルコールは一時的にリラックス効果を感じることができますが、中途覚醒を招き、睡眠の質を低下させます。

アルコールが体内に入ると代謝され、「アセトアルデヒド」という物質に変換されます。このアセトアルデヒドは二日酔いの原因物質で、強い交感神経刺激作用を持ち、睡眠を阻害する血中のカテコールアミン(興奮性物質)を増加させることが報告されています。

さらに、アルコールは閉塞性睡眠時無呼吸をはじめとした睡眠障害を増悪させるだけでなく、依存性もあることから、日常的な摂取を控えることが推奨されています。

よって、睡眠薬の代わりとしてのアルコール摂取は避け、自然なリラックス方法を見つけることが大切です。

喫煙習慣を改善する
喫煙は不眠を引き起こす要因の一つです。

タバコに含まれるニコチンには覚醒作用があり、就寝前に喫煙すると寝つきが悪くなり、夜中に目が覚めやすくなることが知られています。

さらに、日常的な喫煙は喫煙をしない人と比べて、入眠困難、中途覚醒、睡眠時間の減少、深い睡眠の減少が顕著であり、日中の眠気も強いことが報告されています。

したがって、良い睡眠のためには禁煙することが大切です。

夜以降はカフェインを摂らない
カフェインは覚醒効果があるため、夜間の摂取を避けるべきです。

カフェインの代謝能力には個人差があり、3時間程度で分解できる人もいれば、7時間程度かかる場合もあります。

よって「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」では、カフェインを含む飲み物や食品の摂取は、午後から夜にかけて控えることが推奨されています。

コーヒーや紅茶、エナジードリンク、お茶などを摂取する際には、時間帯に注意しましょう。

朝起きたら日光を浴びる
朝の日光を浴びることで、体内時計がリセットされ、自然な覚醒リズムを保つことができます。

「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」でも、起床後すぐに日光を浴びることでメラトニンの分泌が抑えられ、体が活動モードに切り替わりやすくなることから強く推奨されています。

また、朝の日光浴を習慣化することで、夜の入眠も速やかになるとも言われています。

時間は数分間で十分です。たとえ天気が悪くて太陽が見えなくても、覚醒に必要な光の成分は届いているので、朝起きたらすぐにカーテンを開けることを意識しましょう。

朝ごはんを食べる
朝ごはんをしっかり食べることは、体内のリズムを整えるために非常に大切です。

朝食を摂ることで、体が目覚め、エネルギーを供給し、一日のスタートをスムーズに切ることができます。また、規則的な食事は、睡眠習慣を整え、夜の眠りにも良い影響を与えます。

しかし、近年は多忙から朝食を取らない人が多くいます。朝食の欠食は睡眠だけでなく、生活リズムや肥満リスクにも影響を与えることを知り、今一度その大切さを見直すと良いでしょう。

あなたは不眠?チェックリストで確認

あなたは不眠?チェックリストで確認

さて、ここまで不眠の改善法について解説してきましたが、自分が今不眠なのかどうか分からない方もいるでしょう。そこで、下記に不眠かどうか簡単にチェックできるリストを用意しました。複数項目に当てはまる場合は不眠の可能性が高いので、注意してください。

  • ▢ 就寝時間と起床時間が毎日バラバラになっている
  • ▢ 寝室が暑すぎる、寒すぎる、または騒がしいと感じる
  • ▢ 日中にカフェインやアルコールを摂りすぎている
  • ▢ スマートフォンやPCを就寝直前まで使用している
  • ▢ 夜になるとストレスや不安を感じてい
  • ▢ ベッドに入ってから考え事が多く、頭が冴えてしまう
  • ▢ 運動不足で体を動かしていない
  • ▢ 就寝前に夜食をとってしまう
  • ▢ 日中に強い眠気に襲われる
  • ▢ 朝起きた時のスッキリ感がない
  • ▢ 生活リズムが昼夜逆転している

医療機関の選び方:不眠に悩む時に頼るべき専門家とは?

医療機関の選び方:不眠に悩む時に頼るべき専門家とは?

もし自身に不眠の症状が見られた場合、どうすれば良いのでしょうか?長期間不眠が続き、それが日常生活にも影響を及ぼしている場合は、速やかに専門の医師に相談することが大切です。

不眠は次の診療科に相談することができます。

睡眠外来
睡眠外来は、睡眠に関する診断と治療に特化した診療科です。

睡眠障害の診断には専門的な検査が必要なことがあり、ポリソムノグラフィー(睡眠ポリグラフ検査)などの精密検査を受けることができます。これにより、不眠の原因が何かを突き止め、適切な治療を受けることが可能です。

また、睡眠外来に在籍している医師は、睡眠治療に関する豊富な知識を持っていることが多いです。ゆえに、生活習慣の改善や薬物療法が効果的に進められ、睡眠の質を向上させるサポートを受けることができます。

心療内科
心療内科は、心と体の相互作用に着目した診療科です。

不眠の背後には、ストレスや不安、うつ状態が隠れていることも多く、その場合は心療内科での診療が効果的です。

心療内科ではカウンセリングを通じて心理的な問題にアプローチし、必要に応じて薬物療法を行うこともあります。これにより、根本的な原因を解消することができ、睡眠の質の改善につながります。

精神科
精神科も、不眠が精神的な要因に関連している場合に頼るべき診療科です。

心療内科と同様、うつ病や不安障害などの精神疾患は、不眠を引き起こす大きな要因となることが多いため、精神科での適切な診断と治療が重要です。精神科では薬物療法や精神療法を用いて、患者の状態に合わせた治療が行われるため、不眠症状の緩和とともに精神的な健康の改善が期待できます。

内科
内科では、不眠の原因が身体的な疾患に関連している場合に対応することができます。

例えば、高血圧や心臓病、甲状腺機能異常などの身体的な問題が原因で不眠が生じている場合、内科での診断と治療が必要です。これらの身体的な健康状態を改善することで、睡眠の質が向上することが期待できます。

呼吸器内科
呼吸器内科は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)など、呼吸器の問題が原因で不眠が生じている場合に受診すべき診療科です。

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まることで睡眠の質を大きく低下させる疾患です。呼吸器内科では、CPAP(持続陽圧呼吸)療法などの治療が提供され、これにより睡眠の質が劇的に改善することがあります。

パートナーや家族が不眠に悩んでいる場合のサポート方

では、自分ではなく、家族や身近な人が不眠に悩んでいた場合は、どのようにサポートするのが良いのでしょうか?

不眠に寄り添うサポート:環境作りとリラックス習慣
パートナーや家族が不眠に悩んでいる場合、まずはその苦しみに共感し、寄り添うことが最も重要です。

「眠れないことは仕方がない」と無理に受け入れるのではなく、一緒に快適な環境作りを目指しましょう。

例えば、前述したように寝室の環境を一緒に見直してみたり、リラックスを促すために、一緒に軽いストレッチや深呼吸を行ったりすると、体も心も落ち着きやすくなります。

心を落ち着かせるルーティンを作り、少しずつ実践してみましょう。

医療機関の受診を考えるタイミングと勧め方
不眠が続いて改善が見られない場合や、日常生活に支障をきたしている場合は、医療機関の受診を検討することが大切です。

この時、パートナーや家族に「病院に行った方がいい」と強要するのではなく、「専門家に相談してみることで気持ちが楽になるかもしれない」と、優しく提案することで抵抗感を減らしましょう。

専門医による診断により、不眠の原因を明らかにし、適切な治療を受けることで症状が改善する可能性が高まります。医療の力を借りることは決して甘えではありません。生活の質を向上させる重要なステップであり、家族やパートナーとしてその背中を押してあげることが大切です。

まとめ

今回は、不眠の改善法について詳しく解説しました。

不眠は日常生活や睡眠習慣を少し整えることで、改善を目指すことが可能です。しかし、不眠が長期にわたって続いている場合や、日常生活にも影響を及ぼしている場合は、一人で抱え込まず、専門医の力を借りましょう。

良い一日は、良い睡眠から始まります。

その大切さを今一度見直し、より良い睡眠が取れるよう意識していきましょう。

(玉木 いずみ)

参考文献
  • 健康づくりのための睡眠ガイド 2023(案)
    [ https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf ]