リハビリテーションとは?どんなことをするの?

リハビリテーションと聞けば、患者さんが病院などで歩いている姿や機械を使って運動をしている姿を思い浮かべる方は多いと思います。実際に、病院でのリハビリでも歩行練習や筋トレも行います。ですが、具体的にどんなことをするのか、よくわからない。そんな方も多いのではないでしょうか。この記事ではリハビリテーションがどんなものか、どのようなことをするのか説明したいと思います。

そもそもリハビリテーションとは?

リハビリテーションとは英語で書くとrehabilitationと書きます。このうち、「re」とは「再び」と言う意味を持つ単語です。さらに、「habilitation」については「持っている機能を発達させ、生かしていく治療」を意味します。つまりリハビリテーションとは、障害や疾患によって落ちてしまった能力を、再び最大限活かせるように元に戻していく治療を意味するのです。

1968年に世界保健機関が定めたリハビリテーションの定義は「リハビリテーションとは能力低下の場合に機能的能力が可能な限り最高の水準に達するように個人を訓練あるいは再訓練するため、医学的・社会的・職業的手段を併せ、かつ調整して用いること」としています。

ただし、ただ単純に元に戻すと言う意味合いではありません。今ある能力を最大限に活かして、日常生活を送ってもらうための治療をリハビリテーションと呼びます。

例えば、スポーツ選手のリハビリで言えば、足の怪我によって足の筋力が落ちたとします。この場合は競技復帰のために怪我を治し、足の筋トレや競技の練習をするリハビリをすることは想像しやすいでしょう。この場合、怪我で落ちた能力=筋力を元に戻すために、筋トレをするという単純な構図です。

しかし、例えば脳卒中で片腕に麻痺が残った方のリハビリをするとします。この場合、先ほどのスポーツ選手のように元に戻すのは難しいでしょう。なぜなら脳卒中で片麻痺が残った場合、脳の障害に伴う症状なので完全に元には戻らない可能性が高いからです。もちろん、麻痺の程度が軽ければ麻痺していない側と同じように動かすことができるかもしれません。これは個人差があるため断定できませんが、症状によっては重い麻痺が残り、動きがかなり制限されます。

そのような状態でも、患者さんは日常生活を送っていかなければなりません。このような方のリハビリでは、麻痺した腕を元に戻すための治療ではなく、今ある能力を最大限引き出すことで日常生活を送るための練習をしていくのです。

つまり、リハビリテーションを英語的に直訳すると「元ある能力を取り戻すための治療」となりますが、実際には「基本的な歩行などの動作・日常生活動作の回復を図り、今ある能力を最大限発揮することで元の生活に戻るための治療」と言えます。

リハビリテーションの分野

リハビリテーションといえばリハビリ専門職の指導のもと、患者さんが運動や徒手操作で治療していくイメージが強いのではないでしょうか。しかし、リハビリテーションはそれだけではありません。その分野について説明します。

医学的リハビリテーション
病院やクリニックなどの医療機関で行うリハビリテーションで、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が関わります。ほとんどの方が思い浮かべるリハビリテーションとはこの医学的リハビリテーションのことです。心身機能の回復・維持・強化が主な目的となり、筋力強化運動・関節可動域練習・歩行練習やバランス練習が主な内容です。現在ではリハビリ専門職だけでなく医師や看護師、ケアマネージャーなど多くの人間がチームを組んで実施しています。

職業リハビリテーション
障害のある方でも働きがいを持ち、人間らしく仕事を行えるように職業指導などを行う職業サービスを指します。日本では職業雇用促進法や障害者総合支援法などが制定されていて、これらの法律に基づきサービスが提供されているのです。

社会リハビリテーション
社会生活力を高め、障害があっても社会で生きていけるための力を身につけるためのプロセスのことです。社会生活力とは、「さまざまな社会的な状況の中でニーズを満たし、一人一人に可能な最も豊かな社会参加を実現する権利を行使する力」と定義されています。

教育リハビリテーション
障害のある児童や人の能力を向上させ、潜在能力を高めることでやりたいことを実現できるように支援することを目的としています。障害児の支援的教育だけでなく、社会人を対象とする社会教育や生涯教育なども含むライフサイクルを包含する幅広い教育活動を意味するのです。

リハビリテーション工学
リハビリテーションのための工学的アプローチのことを指します。医学的リハビリテーションや教育リハビリテーションのように患者さんに直接治療を施していくわけでなく、車椅子や技師・装具を利用して患者さんが生活しやすいように環境整備していくものです。具体的には義肢・装具の開発、車椅子・環境制御装置・コミュニケーション機器などの開発をはじめ、住宅改造や公共交通機関のバリアフリー化などが挙げられます。

リハビリテーションの目的

リハビリテーションの分野については前項で説明したとおりです。ほとんどの方が関わるリハビリとは医学的リハビリテーションになりますが、具体的にリハビリテーションは何を行うのでしょうか。この項では医学的リハビリテーションの目的について説明していきます。

身体機能の回復
上述したように、失われた機能を取り戻すことはリハビリの大きな目標になります。具体的には筋力強化、関節可動域改善、皮膚感覚の回復、四肢麻痺の促通などが挙げられます。さらにバランス練習や歩行練習を行うことで患者さんが自立した行動が取れるように、基礎的な動作の獲得が目標です。

日常生活動作の獲得
上述した身体機能の回復だけで、患者は自宅復帰できるわけではありません。身体機能を改善したうえで、日常生活動作を再獲得する必要があります。具体的には食事や排泄・着替え・入浴・移動などを自立して行えるように練習するのです。場合によっては家事動作の練習を始め、外出時を想定した公共交通機関を使用する練習も行います。

早期離床・回復
患者さんが早期に離床することで回復が早くなり、入院期間の短縮が期待できます。これは患者さんが早期に自宅復帰するために重要であり、かつ医療費削減にも効果的です。そのため、可能な限り早く離床して改善に向けたリハビリを行う必要があります。単純にベッド上に座る練習から車椅子に移る練習など行い、できるだけ早い段階で離床します。

社会復帰
若い患者の場合には職場への復帰、高齢者の場合では趣味サークルへの復帰などを目標にリハビリを進めていきます。障害前と同じように復帰できることが理想ですが難しい場合もあるでしょう。そういった時には職場の配置転換や代替趣味の検討など、社会と触れ合う機会を設けられるように考えなければいけません。そのためにも住宅改修や、介護保険サービスを検討することもあります。

介護予防
介護予防では高齢者が自宅での生活を維持するために必要なリハビリを提供します。具体的にはデイサービスやデイケア、訪問リハビリを行い、患者さんの身体機能を維持する運動、自宅での日常生活動作を練習します。患者さん自身の身体能力だけでなく、介護負担を減らすことも大きな目的となるのです。

リハビリテーションの種類

リハビリテーションの分野や目的については前項での説明のとおりです。しかし、リハビリの種類がわからないという方もいらっしゃるかと思います。ここではリハビリテーションの種類について説明していきます。

理学療法
病気・怪我・加齢などによって失われた、もしくは低下した機能の回復に向けて運動療法や物理療法を行う治療です。理学療法では主に腕を動かす、足を動かして歩く、立ち上がるといった粗大運動と呼ばれる行動の回復に努めます。具体的な治療方法としては関節可動域運動・筋力強化運動・歩行練習・バランス練習などです。物理療法では温熱や光・電気などを利用した治療方法で痛みや筋緊張、血流の改善などの効果が期待できる治療です。

作業療法
作業療法では理学療法よりさらに細かな運動を行います。理学療法では腕をうどかす・歩くといった粗大運動がメインとなりますが、作業療法では指で物を掴む、文字を書くといった巧緻運動がメインです。そのため内容としては積み木やパズル、編み物などの手作業が多くなります。また、身体的なリハビリテーションだけでなく精神疾患に対するリハビリテーションも作業療法の対象です。

言語聴覚療法
話す・聞く・食べる機能に特化したリハビリテーションを言語聴覚療法と呼びます。脳卒中後遺症によく見られる失語をはじめとした高次脳機能障害、小児の言語発達遅滞に対して、話す練習や聞いて言葉を理解する練習をします。また、麻痺や加齢によって誤嚥機能が落ちた患者に対しては食べる練習を行い、誤嚥性肺炎につながるリスクを最小限にし、安全に食事できるようにアプローチをするのも言語聴覚療法なのです。

リハビリテーションの役割分担

リハビリテーションは疾患の病期において役割が異なります。病期とは以下のように分類されるものです。

  • 1. 急性期
  • 2. 回復期
  • 3. 維持期・生活期
リハビリテーションの役割分担
出典:厚生労働省審議会保健局平成29年度4月19日意見交換会 テーマ3 リハビリテーション参考資料

急性期とは疾患の受傷直後、生命の維持に関わる段階です。そのため、第一に廃用予防と疾患の重症化対策を考えます。リハビリとしては積極的に関わるわけでなく、関節可動域の維持や座位保持訓練などベッド上のみで行えることがほとんどです。

回復期では心身機能や日常生活動作が著しく回復する段階です。この段階でのリハビリは予後を大きく左右します。したがって理学療法士・作業療法士・言語聴覚士すべてが関わり、積極的にリハビリを行なってあらゆる機能の回復を図ります。内容としては歩行訓練や筋力強化練習、在宅復帰に向けての日常生活動作練習や嚥下練習などを行います。

維持期・回復期となると、心身機能としては改善が見込めない段階となります。この段階では心身機能改善に向けたリハビリはあまり行いません。残された機能を最大限に活かすことで患者さんが安全に日常生活を送れるように工夫していく段階となります。そのため、リハビリ専門職のみならずケアマネージャーやソーシャルワーカーといった職種の方達と患者さんが日常生活に復帰するために関わっていきます。リハビリとしては入院施設でのリハビリよりもデイサービスやデイケア、訪問リハビリといったサービスがメインなります。

この役割分担はもちろん患者さんや疾患によって微妙に変化します。しかし、最終的な目標としては自宅に復帰すること、社会復帰することが目的です。

リハビリテーションについてのまとめ

リハビリテーションとは、単純に身体機能を回復させるだけのものではありません。身体機能の回復を大前提としておきながら、患者さんが患者さんらしく生きるために日常生活動作を行い、社会復帰するための手助けをする治療と言えます。そのために理学療法や作業療法などを適切に行い、病期ごとに役割を分担しながら治療を進めていかなければなりません。

リハビリテーションで行う内容は患者さん一人一人によって異なります。わからないことがあれば、専門職に聞いてみてくださいね。

(福田 翔馬)

参考文献
  • 厚生労働省兵士22年度障害者総合福祉推進事業報告書
  • 厚生労働省審議会保健局平成29年度4月19日意見交換会 テーマ3 リハビリテーション参考資料