けいれんってなに? けいれんの種類と原因となる病気をまとめて解説します

けいれんは、自分の意思と関係なく筋肉が動くことを指します。発熱をした子供に多い熱性けいれんや、全身が硬直するようにけいれんするてんかん発作が有名ですが、他にもさまざまな原因によってけいれんは生じます。なので、原因になる病気を知ることが重要になるでしょう。今回の記事では、代表的なけいれんの種類と原因になる病気を解説します。

けいれんとは

脳内には、体を動かしたり物事を考えたりするために多くの電気信号が生じています。この電気信号が乱れると、自分の意思とは無関係に体が動いたり、筋肉が硬直したりしてしまいます。この状態をけいれんと呼びます。

特に子供は、脳の発達が未熟なためけいれんを起こしやすいです。高熱で生じる熱性けいれんや、激しく泣いた時に脳が酸素不足になることで生じる憤怒けいれんなどがあります。病気を伴わない子供のけいれんは、脳が発達するにつれて生じなくなることがほとんどです。

けいれんの症状

けいれんの症状

主なけいれんの症状は以下になります。

  • ・ 意識がなくなる
  • ・ 全身が硬直する
  • ・ 体が震える

他にも、呼吸困難に陥ったり嘔吐や失禁をすることもあります。

けいれんは脳の電気信号の異常によって生じます。なので、脳のどこの部位に異常が起きるかによって症状も異なります。例えば、脳の広い範囲で異常が起きれば全身性のけいれんにつながり、脳の一部分に異常が起きれば体の特定の部分のけいれんが生じます。

けいれんの症状は大体数秒から1〜2分続き、長くても5分以内で収まることが多いです。症状が長引くと呼吸困難にもつながることもあるので注意が必要です。

けいれんの前兆
けいれんを起こす人の中には、症状が起きる前に前兆を感じる人もいます。主な前兆には以下のようなものがあります。

  • ・ 強烈な匂いや味
  • ・ 幻覚や幻聴
  • ・ 既視感や見慣れているものを初めて見るような感覚
  • ・ けいれんが起きそうだという予感

これらの前兆は、異常な電気信号が起きる部位に関連しています。例えば、脳の中で嗅覚や味覚を感じる部分に異常が起きれば、強烈な匂いや味を感じると言われています。視覚や聴覚を司る部分に異常が起きれば幻覚や幻聴につながります。

けいれん後の様子
けいれんが終わった後に、頭痛や筋肉痛、疲労感を感じる人もいます。意識が朦朧としたり錯乱を起こすこともあるようです。中には、トッド麻痺と呼ばれる、体の片側だけに起こる筋力低下を伴うこともあります。

ただし、発作後は正常な状態に戻ることの方が多いです。ほとんどの人はけいれん中のことは覚えておらず、発作後健忘とも呼ばれています。

けいれんの種類

けいれんの種類

けいれんは、生じる場合と体の一部分だけに生じる場合があります。どちらの発作が起きるかはけいれんの種類により異なります。けいれんの種類は、主に部分発作と全身発作に分かれます。

部分発作
脳の一部分や片側だけに異常な電気信号が生じることで起きるけいれんを部分発作と呼びます。部分発作には単純性部分発作と複雑性部分発作の2種類があります。

部分発作は一時的に起こることがほとんどですが、まれに持続的に起こることもあります。持続性部分発作は、数秒〜数分おきに発作が起こる状態が最大数年間続きます。この場合のけいれんは体の片側だけに起きることが多いです。主な原因としては、脳卒中など脳の一部分の障害や脳炎・はしかなどの脳の炎症が挙げられます。

1. 単純性部分発作
単純部分発作は、異常な電気信号が脳の狭い領域のみで起こるけいれん発作です。症状も、異常が起きた脳に関連する部位のみに生じます。

例えば、脳の中でも左腕に信号を出す部分に電気信号が生じれば、急に左腕が動いたり震えたりします。意識を失うことはほとんどなく、けいれん中の出来事を忘れることもありません。

2. 複雑性部分発作
複雑部分発作は、異常な電気信号が脳の狭い領域で生じた後、近くの領域に広がっていくことで生じるけいれんです。

けいれん中は、じっと一点を見つめる、手足を動かす、声を出す、他人の発言が理解できない、唇を噛むなどの症状が現れます。錯乱を起こすこともあります。これらの症状は数分間続くことが多いです。

全般発作
全般発作は、脳の広い領域に異常な電気信号が生じることで起きます。意識の消失を伴うことが多く、全身的な動きが見られます。

代表的な全般発作には以下の5種類があります。以下のうち、1. 非定型欠神発作・2. 脱力発作・3. 強直発作は、4歳未満の小児に発生する重症てんかんの症状としてみられ、通常レノックス-ガストー症候群も呼ばれます。

1. 欠神発作
欠神発作は、小さな発作である定型欠伸発作と、大きな発作である非定型欠伸発作の2種類があります。

定型欠神発作は、5〜15歳の子供に見られることが多いです。発作が起きている間は、瞼や顔の筋肉がけいれんしたり、一点を見つめたりします。意識を失っているため、発作中の出来事は覚えていません。静かに座っている時に起きることが多く、発作が終わると発作前に行っていたことを急に再開するのが特徴です。発作は1日数回、10〜30秒程度続きます。

非定型欠神発作は、定型欠神発作と比べてけいれんの症状が強く長く生じます。発作中の出来事を覚えているのも定型との違いです。子供だけでなく大人になっても続くことが多く、神経的な異常や発達の遅れも伴っていることが多いです。

2. 脱力発作
脱力発作は主に子供に起こります。名前の通り、脱力をしているように見える発作です。けいれんが生じると、筋肉の緊張とともに意識が完全に失われて、地面に崩れ落ちるように倒れるのが特徴です。

3. 強直発作
強直発作は筋肉が硬くなる発作です。子供に起こることが多く、発作が生じると地面に倒れ込んでしまうこともあります。発作は10〜15秒程度であり、意識が失われることはありません。

4. 強直間代発作
強直間代発作は、筋肉の収縮と弛緩が繰り返される発作です。意識の消失と全身のけいれんが特徴です。強直間代発作は一次性と二次性に分けられます。

一次性は、脳の中央に異常な電気信号が生じることで発作が起きます。叫び声とともに発作が始まり、発作後には頭痛や錯乱、疲労感が生じることが多いです。

二次性は通常、脳の片側の狭い領域で異常な電気信号が生じたあと、脳の両側に電気信号が急速に広がることで生じます。脳全体が機能不全に陥るため、大きな発作につながりやすいです。

5. ミオクロニー発作
ミオクロニー発作では、腕や足がピクッと動くようなけいれんが起きます。発作は短く、繰り返し起こることがあるのが特徴です。意識を失うことはありませんが、意識の消失を伴う強直間代発作に発展することもあります。

青年期に起こる若年性ミオクロニーてんかんは、腕の筋肉が素早くビクッと動く発作が生じます。発作の約90%は強直間代発作につながり、欠神発作を起こす人もいます。

けいれんの原因

けいれんの原因は、てんかん性と非てんかん性にわけられます。

てんかん性では、明らかな原因が認められず、けいれんは繰り返し発生することが多いです。

非てんかん性では脳を刺激する病気や要因があることでけいれんが生じます。全身性のけいれんの原因には、

  • ・ 脳卒中などの脳の疾患
  • ・ 脳炎や髄膜炎
  • ・ 低カルシウム血症
  • ・ 妊娠高血圧症候群

などがあります。高熱や感染症、薬剤、脳の酸素不足、栄養不足によって、普段はけいれんを起こさない人が一時的にけいれんを起こすことがあり、これは単発的なけいれん発作です。
局所的なけいれんの原因には、

  • ・ 顔の片側にけいれんが起きる片側顔面痙攣
  • ・ まぶたの痙攣である眼瞼(がんけん)痙攣
  • ・ 自分でコントロールできない動きを伴うチック
  • ・ 首が一定の方向に曲がる痙性斜頸(けいせいしゃけい)
  • ・ 字が書けなくなる書痙(しょけい)

などがあります。けいれんは精神障害などにより起きることもあり、心因性の非てんかん性発作と呼ばれます。特にけいれん発作を普段から起こす人は、身体的または精神的なストレス、飲酒、睡眠不足、薬剤の影響で発作が生じやすくなるので注意が必要です。
特定の音、激しく点滅する光、ゲーム、体のに触れることで、けいれん発作が起こる場合もあります。これは反射性てんかんと呼ばれます。

けいれんの原因は、年齢ごとにも特徴があります。

2歳未満の場合、先天性の異常や分娩異常などによる脳疾患によりけいれんを生じることがあります。脳に異常がない場合は、高熱または低血糖や電解質などの代謝異常によって、けいれんが誘発されます。この場合、発熱や代謝異常が解消されればけいれんは止まります。2歳以上15歳未満の子供の場合は、けいれんに原因がないことが多いです。15歳以上の成人になると、脳卒中などの脳疾患、頭部の外傷、アルコールの解脱症状によってけいれんが生じることがあります。

けいれんの治療法

けいれんの治療法

けいれんを治すためには、原因になる病気があればその病気の治療を行います。低血糖や代謝異常でけいれんが生じている時は、ブドウ糖を服用したり代謝の偏りを調整します。

原因となる病気がなかったり治療が難しい場合は、抗てんかん薬でけいれんを抑えます。抗てんかん薬は経口薬であり、飲むことでけいれんが繰り返し起こる可能性を減らすことが可能です。ただし、抗てんかん薬で副作用が生じることもあるため、服用の際は医師による量の調節が必要です。

多くの人は抗てんかん薬でけいれん症状が落ち着きます。しかし、抗てんかん薬が効かない人もいるため、そういった人には手術が行われることもあります。

けいれんの症状が続くならすぐに医療機関へ

けいれんの症状が続くならすぐに医療機関へ

けいれんは、自分の意思に反して体が動く状態です。主に脳の異常によって生じますが、明確な原因がなくても起こることがあります。
けいれんが起きると、「何が原因なのか」と不安に感じてしまう方もいるでしょう。単発のけいれんであれば、発熱や低血糖、心因性などが原因であることが多く、そこまで気にしなくても良いことが多いです。しかし、何度も起こるけいれんには脳疾患や重大な病気が隠れていることもあります。けいれんが繰り返し起こる場合や、気になることがある場合はすぐに病院に受診するようにしてくださいね。

(なや はるか)

参考文献
  • MSDマニュアル プロフェッショナル版 痙攣性疾患
    [ https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ ]
  • 日本赤十字社
    [ https://www.jrc.or.jp/study/safety/cramp/ ]
  • 健康サイト by アリナミン製薬
    [ https://alinamin-kenko.jp/navi/navi_keiren.html ]