「腰が痛くて、足がしびれる」このような症状を年代別に解説します!
「近頃、腰が痛いし、足先までしびれる」このような相談を受けることがあります。
腰の痛みから、足先までのしびれが生じる疾患はあります。
腰の痛みと足のしびれがあると、日常生活にも支障が出るので、とても辛いと思います。
腰の痛みと足のしびれが起きる疾患は、年代によって異なります。
全ての年代が同じ疾患とは限りません。
腰の痛みと足のしびれの関係性から、年代別の疾患について、詳しくお話していきます。
そして、年代に関係なく発症しやすい「ぎっくり腰」についてもお話します。
腰痛から足のしびれが起きる原因と状態
なぜ腰痛から足先のしびれが起きるのか疑問が生じると思います。その原因と詳しくお話していきます。
腰痛から足のしびれが起きる原因
腰痛が起きると、お尻と太ももから両足のつま先まで、しびれが生じることがあります。
腰痛から足のしびれが起きる原因は、神経が圧迫されるからです。
腰部に何らかの影響で神経が圧迫されると、腰の痛みとともに両足の指先までしびれが起きます。
これは、腰部にある神経が足先まで繋がっているためです。(下記の図を参照)
坐骨神経痛の症状は、次のような症状が出現します。
- ・ 長時間立っていると痛くて辛い
- ・ 腰から足のつま先にかけて痛みが出る
- ・ お尻の痛みで座り続けることが困難
- ・ 腰を反らすと下肢のしびれが強くなる
- ・ 長時間の歩行も辛いため、休みながら歩行する
- ・ 体をかがめると痛みが強くなり、靴下を履くのがつらい
- ・ 「ビリビリ」「ピリピリ」「ジリジリ」などのしびれが出現する
症状は、個人差があるのが特徴です。
坐骨神経痛によって、日常生活にも支障が生じることがあります。
坐骨神経痛は、原因となる疾患に対する治療が必要となります。
最初は腰痛だけだったが、時間の経過とともに腰部の神経を圧迫するようになり、足のしびれが伴うことがあります。そのため、腰痛が起きると必ずしも足のしびれが生じるとは限りません。
※ あくまでも、腰痛によって神経が圧迫されると、足先までのしびれが生じます。
「腰が痛くて、足がしびれる」このような症状を年代別に解説!
腰の痛みと足先までのしびれを感じたら?自分や家族など周囲の方々は、どの疾患が考えられるでしょうか?
年代によって、腰への負荷や骨の状態が異なるため、疾患にも相違が生じます。
年代別に発症しやすい疾患について、解説していきます。
10~15歳は腰椎分離症・すべり症
腰椎分離症・すべり症は、成長期に発症しやすい疾患です。
なぜ、成長期に発症しやすいのかを踏まえて、疾患についてお話していきます。
発症の原因は、ジャンプや腰の回旋など、スポーツによって繰り返される腰へのストレスです。
「腰椎分離症」は、腰椎の後方部分が疲労骨折(分離)する疾患です。
腰椎の安定性が失われてズレが生じてしまった状態を「腰椎分離すべり症」と言います。
このズレが生じたときに神経を圧迫し、足までのしびれが起きます。
成長期で骨が未発達で、部活動などをしている10~15歳が発症しやすいです。
スポーツ選手の30~40%に発症しています。
発症の原因には、遺伝も関与していると言われています。
症状は、次のようなことが挙げられます。
- ・ 安静時は症状がなく、体動時に腰痛が生じる
- ・ 後ろに体を反らすと、腰の痛みが出る
- ・ 歩行時、足のしびれが強くなる
- ・ 長時間の立位が辛い
- ・ 尿の回数が増える、残尿感など排尿の症状が出る
※ 主な症状は、腰痛です。安静時に腰痛が生じないため、放置してしまい運動を継続し、悪化することが多くみられます。
確定診断をする検査は主に、レントゲン検査とMRIです。
レントゲン検査では、腰椎が分離しているところの確認をします。
MRIでは、レントゲン検査では見えにくい部分の画像が写し出されます。
場合によっては、筋力低下や感覚検査などの神経的所見を診ます。
- ・ 治療の基本は、保存的治療です。
安静とコルセットの装着をし、骨折した部分が癒合するまで経過を見ます。
痛みがある場合は、鎮痛薬の内服をすることもあります。
レントゲンで腰の骨の様子を見ながら、理学療法士による筋力トレーニングで、再発を防止します。 - ・ 手術療法
腰椎分離すべり症で、神経の圧迫により下肢のしびれや痛みで日常生活に影響が出る場合は、手術になる場合もあります。
手術では、神経の圧迫を取り除きます。
腰椎分離症・すべり症は、骨の発達が未熟で、スポーツによる繰り返される腰への負荷が発症の原因となります。成長期のスポーツは、無理なく行うことが大切です。
20~40歳は腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアは、働き盛りの男性に多く発症します。
この年代に発症しやすい理由を踏まえながら、疾患について詳しくお話していきます。
腰椎の中には、椎骨の間でクッションの役割をしている椎間板があります。
この椎間板が何らかの原因で突き出す状態を椎間板ヘルニアと言います。
神経を圧迫すると、下肢のしびれが起きます。
激しいスポーツや中腰の姿勢、急に重い物を持ち上げること、加齢などが発症の原因です。
有病率は、はっきりとしたデーターがありません。
男女比は約2〜3:1で男性が発症率の高いことは、証明されています。
主な症状は、腰痛です。
その他に、次のような症状が出現します。
- ・ お尻から足にかけて、痛みやしびれがある
- ・ 足に力が入りにくい
- ・ 足の感覚が鈍い
- ・ 尿が出にくい、便秘がちになる
- ・ 筋力低下
画像検査は、レントゲンとMRIを行います。その他、下肢伸展挙上試験をし、下肢の感覚や筋力低下を見ます。
MRI検査で、椎間板の突出の状態を見ます。突出していても、症状が出なければ経過観察とすることもあります。
- ・ 治療の基本は保存的治療です。
安静とコルセットの装着です。痛みが強い場合は、鎮痛剤の内服をします。
それでも痛みがある場合は、神経ブロックの注射をします。
神経ブロックとは、神経の周りに注射をして痛みを抑える治療です。 - ・ 手術療法
保存的治療で回復がみられず、下肢の脱力感や排尿障害などがある場合は、手術を行います。
神経を圧迫している部分を摘出します。
腰椎椎間板ヘルニアは、スポーツや姿勢、加齢による変化なども関与します。
普段から、腰への負担をかけないように重いものを持つときなどは、気を付けましょう。
50歳~70歳は腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症は、腰の痛みと足先のしびれも起きます。
発症すると、日常生活にも影響が出る疾患です。
この年代で発症しやすい理由を踏まえながら、詳しくお話していきます。
加齢に伴い椎間板の変形から、背骨や椎間関節から突出した骨などにより、神経が圧迫され症状が出現します。
重い物を持つことや先天的な影響もありますが、加齢に伴う変化が発症の原因です。
好発年齢は、50~70歳です。発症率は、分かっていません。
神経の圧迫で腰痛よりは、下肢のしびれや感覚麻痺などの症状が出やすくなります。
症状は、次のことが挙げられます。
- ・ 安静時の腰痛は、ほとんどない
- ・ 長い距離を歩行できない、休みながら歩行する
- ・ 太ももから足先にかけてのしびれがある
- ・ 座ると症状が軽減する
- ・ 進行すると、下肢の脱力感、残尿感、便秘などが生じる
確定診断のために、レントゲンとMRI検査を行います。
狭窄している部分を鮮明に確認するために、脊髄造影をすることもあります。
その他、筋力の低下や感覚麻痺がないかの所見もみることもあります。
- ・ 治療の基本は、保存的治療です。
安静とコルセット装着にて、腰部の固定をして負担を軽減します。
痛みがある場合は、鎮痛剤の内服もしくは、神経ブロックをします。
腰の様子を見ながら、筋力トレーニングで筋力向上をします。 - ・ 手術療法
保存的治療で効果が得られず、しびれなどがみられる場合は、手術を行う場合もあります。
神経を圧迫しているので、早期に治療をしないと進行し、日常生活に支障が出ます。
腰痛としびれが起きたら、医療機関を受診しましょう。
主に高齢者は腰椎圧迫骨折
腰椎圧迫骨折は、高齢者に起きやすい疾患です。
加齢に伴う変化が関与しています。
この年代に起きやすい理由を踏まえながら、詳しくお話していきます。
発症の原因は、腰椎に縦軸方向の外力が加わることで生じる骨折です。
交通事故による衝撃で発症することもありますが、骨粗鬆症が原因であることが多いです。
そのため、骨粗鬆症が起きやすい高齢者が発症しやすくなります。
発症率は、70歳代前半で25%、80歳以上で43%です。
骨がもろいため、重い物を持ち上げることや尻もちなどの転倒で発症します。
強い外力によって神経を圧迫する場合は、足のしびれが起きることもあります。
次のような症状が出ます。
- ・ 安静時の痛みはなく、体を動かすと腰痛が生じる
- ・ 椅子から立つ、寝ている状態から起きるときに痛みが出る
- ・ 痛くて寝返りも打てず、横になっている
- ・ 腰痛から足先までのしびれ
基本的には、レントゲンで確定診断がつきます。
新しい骨折と古い骨折をより精密な検査をするために、MRI検査をすることもあります。
- ・ 治療の基本は、保存的治療です。
骨折部分が戻るまで、安静とコルセットの装着をします。
痛みに対しては、鎮痛剤を内服します。
骨の様子をみながら、筋力トレーニングをすることもあります。 - ・ 手術療法
神経を圧迫して、しびれや痛みが強い場合は、神経圧迫を解除する手術をすることもあります。
腰椎圧迫骨折の原因は、骨粗鬆症による骨のもろさです。
年齢を重ねると骨密度も低下し、骨ももろくなります。転倒の予防と重い物を持つことは、控えましょう。
いわゆるぎっくり腰とは
突然の腰の痛みは、本当に辛いです。
ぎっくり腰は、年代に関係なく発症します。
ぎっくり腰は、足のしびれが起きるのかも含めお話していきます。
ぎっくり腰と呼ばれていますが、正式には「急性腰痛」と言います。
突然、腰の痛みから動けなくなるほどの激痛です。
ぎっくり腰が発症するきっかけは、次のことが挙げられます。
- ・ 重い物を持ち上げたとき
- ・ くしゃみをしたとき
- ・ 棚にある荷物を取ろうとしたとき
- ・ 少しお辞儀をしたとき
あくまでも一例で、発症のきっかけは多岐にわたります。
ぎっくり腰のはっきりとした原因は、分かっていません。
ぎっくり腰から、足のしびれが起きることは少ないです。
発症してから1~2週間程度で軽快することが多くあります。
足のしびれが起きているときは、椎間板ヘルニアが隠れていることもあります。
発症時は安静にし、痛みが強いときに痛み止めの内服や湿布も有効的です。
痛みが軽減してきたら、徐々に体を動かしましょう。
前述したように原因は分かりませんが、日頃から腰への負担をかけないことが大切です。
まとめ
「腰が痛くて、足がしびれる」このような症状がある場合、年代によって疾患が異なることをお話しました。
腰は、体を支える働きがあるので、負担がかかりやすいです。
腰痛は、安静時は痛みがなく動くと痛いことがあります。
この状態を放置すると、腰痛から足先までのしびれに発展することもあります。
腰痛は、早期の治療が大切です。
腰痛が悪化して日常生活に支障が出る前に、必ず対処をしましょう。
(岡野 恭子)
- 医療法人 くすのき会
[ https://kusunokikai.or.jp/waist/#anc3 ] - 一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
[ http://www.jssr.gr.jp/general/sick/ ] - 公益社団法人 日本整形外科学会
[ https://www.joa.or.jp/public/sick/body/waist.html ] - Minds ガイドラインライブラリ
[ https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0017/G0000309/0012 ]
[ https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0046/G0000129/0010 ]