女性がピルと付き合うために知ってほしいこと

皆さんは、ピルという薬がどんなものか知っていますか?
単純に生理を早めたり遅らせたり、妊娠を防ぐだけではありません。
服用する女性が増えてきているピル。
今回はそのピルについて解説します。
女性のからだには、生理周期があります。
思春期を迎えると、初潮といい月経が始まります。妊娠するために備わった機能です。

月経は一般に生理と呼ばれ、1が月に1週間ほど続く場合があります。
個人差はありますが、月経のある時期、ない時期と繰り返し、おおよそ28日で1周します。
これが生理周期です。

生理周期

生理周期は、4つの時期があります。卵胞期、排卵期、黄体期、月経期です。
卵胞期は、排卵をおこさせる準備をする時期。
排卵期は文字通り卵巣から卵子が排卵する時期。
黄体期は排卵後に卵子が受精した場合に子宮に着床、いわゆる妊娠しやすくさせる時期。
受精しなかった場合、卵子は黄体から白体に変わり、妊娠しやすいように厚くなっていた子宮内膜がはがれて生理がくる、月経期で1周期です。
この周期は皆さんほぼ共通です。
いっぽう、現代社会において、多様なライフスタイルを持つ女性が増えてきました。
したがってライフイベントにおいても自分のからだをコントロールしたい女性も増えてきました。

単に妊娠出産だけではなく、自分の生き方を自分で選び、女性に備わっている機能を自分でコントロールできる時代になってきました。
その方法の1つとして、ピルを活用する女性が増えてきたといえます。しかし、ピルは薬です。その性質をしっかり知っていただかないと危険もあります。
まずはピルの説明です。

ピルはどういう薬なのか?

ピルはどういう薬なのか?

ピルは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンに似た成分でできています。
女性のからだから卵巣刺激ホルモンと黄体形成ホルモンが分泌されます。
卵巣刺激ホルモンと黄体形成ホルモンは、卵巣から卵子を成熟させて排卵をおこさせるホルモンです。卵胞が発育してくるとエストロゲンが分泌されます。このエストロゲンは、受精した卵子が着床しやすいように子宮の内膜を厚くする作用があります。
ピルは、服用することによってこの卵巣刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの分泌を抑えて、排卵を抑制します。
さらに卵胞から分泌されるエストロゲンの分泌を抑えることによって子宮の内膜を薄く保つようにします。
さらに、子宮頸管の粘液の粘調が増すことにより精子の侵入を抑える効果があります。

このように、ピルは以上の3つの作用で避妊効果が高く、卵巣の機能を休ませる作用があり、月経量を減らすこともできるため女性の生理特有の不快な症状を軽減することができます。

また、生理周期を自分で調整することもできるメリットもあります。

ピルはどういう薬なのか?

引用参考文献:日本新薬 ルナベル配合錠 インタビューフォーム
[ http://www.nippon-shinyaku.co.jp/assets/files/pdfs/medicine/product/ra/lunabell/interview_lunabell_0907.pdf ]

ピルの作用にはどんなものがあるのか?

ピルの作用にはどんなものがあるのか?

ピルには様々な効果があります。
避妊の効果が高いということは一般によく知られていますが、それだけではなく女性特有の症状を抑えます。

ピルは、生理周期を整える、生理に伴う症状(腹痛、下痢、頭痛などの症状)月経困難症、月経前緊張症候群などを軽減させる効果があります。

女性にとっては、生理周期に伴う症状が軽くなるだけでもストレスの軽減につながると思います。

また、副効用といって、肌荒れやにきび、貧血の改善にも効果があります。

ピルはいつから飲むのか?

ピルは、排卵を抑制させる薬です。月経開始5日目までに服用します。
月経1日目から内服しましょうと産婦人科で説明されることもあります。それは、月経5日目以降の服用は排卵を抑える効果が確実ではないからです。
また、ピルは1日1回決まった時間に内服をします。
飲み忘れに気をつけましょう。

ピル服用で注意したいこと

ピル服用で注意したいこと

ピルはいわゆるホルモン剤です。
薬ですので、薬には副作用があります。

そのために、服用できる患者でも慎重に服用したり、禁止されていたりします。

日本産科婦人科学会からでている日本産科婦人科ガイドライン2017外来編によりますと、高血圧の人、1日15本以上喫煙している人、BMIが30以上の肥満の人、40歳以上の人は慎重に投与もしくは投与禁忌とされています。

ピルの服用を希望する場合は、産婦人科医師の処方が必要です。
また、処方される際には、OC・LEP初回処方時問診チェックシートを記入していただく場合があり、場合によっては処方ができないこともありますので注意が必要です。

引用文献:http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/Gynecological-practice/Gynecological-practice.pdf

ピル服用で注意したいこと~飲み忘れ~

ピル服用で注意したいこと~飲み忘れ~

ピルを内服していくと、よく起りがちなのが飲み忘れではないでしょうか?

ピルは、1日1回1錠を決まった時間に内服する薬です。
ついつい他のことに集中していたなどで忘れてしまうことがあります。

OC・LEPガイドライン2015によりますと、もし飲み忘れた場合、気づいたらすぐに1錠内服するとされています。

また、2日飲み忘れた場合は、すぐに1錠のみ内服し、7日間以上連続して服用するまでコンドームを使用するなど避妊をする、もしくは性交渉を避けるようにするとよいでしょう。

参考文献:OC・LEPガイドライン2015

ピルの副作用について

ピルの副作用について

ピルを服用すると副作用が生じる場合があります。

症状には個人差がありますが、副作用があるということを理解したうえで服用することが大切です。

ピルの副作用には何があるのでしょうか?

ピルの副作用には、吐き気、下痢、むくみ、頭痛、体重増加、服用中の不正出血がみられることがあります。

さらに、注意が必要な血栓症になるリスクです。

ここでは、吐き気と不正出血と血栓症について解説します。

まずは吐き気について。

吐き気の原因は、プロゲステロンではないかといわれています。
ピルは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンを合成した成分からできています。

そのため、からだに偽妊娠の状況にしているため、妊娠初期のつわりに似た症状がみられるのです。

次に不正出血について。

ピルの飲み初めに出血がみられることがあります。
これはホルモンバランスの変化によるものだといわれています。

ピルの服用を続けることで、次第に治まるといわれています。

血栓症について。

血栓症は、血管の中で血の塊ができて、それが血管に詰まって発症することをいいます。

血栓症は最もリスクの高い副作用です。

ピルを服用するとエストロゲンにより血栓ができやすくなります。

そのためピルのエストロゲンの含有量は1錠50㎍未満と低濃度で配合されています。

血の塊が細い血管に詰まってしまった場合、それが脳や心臓、肺などの重要な臓器の場合に命にかかわるからです。

産婦人科で処方されるときに、まずガイドラインから出ているOC・LEP初回処方時問診チェックシートを記入してもらい、血液検査を行って血栓症のリスクがないか確認をしてから処方されます。

日本産科婦人科学会のガイドラインによりますと、虚血性脳卒中のリスクが2倍増加したという報告もあります。

ただ、若い女性では喫煙をしていなければ、血栓症や脳卒中、心血管性疾患にかかるリスクは低いといわれています。

リスクが高い女性は、先にもお伝えしましたが、喫煙している(1日15本以上)、高血圧、40歳以上、BMIが30以上の女性です。

そしてさらには、処方されるときによく聞かれるのは片頭痛があるかということ。

理由は、高血圧や喫煙している女性はOC/LEPガイドラインによると心筋梗塞のリスクがあるからです。

さらに片頭痛があると脳卒中のリスクが増加するといわれています。

もし、喫煙している、高血圧である、40歳以上である、BMIが30以上ある、そして片頭痛があるなどひとつでも該当するようであればリスクが高いため処方されない場合があることを知ってきましょう。

もし副作用があったときどうすればいいのか?

ピルを内服したことによる副作用があった場合の対処法にて解説します。

まずは、吐き気について解説します。

ピル服用の吐き気は、個人差がありますが、飲み始めに症状がみられることがあります。

服用して第3週あたりには気にならなくなるようです。

しかし、吐いてしまうようなら医師に相談しましょう。

もし、内服してから吐き気だけで治まらず、吐いてしまった場合、2時間以内の場合はすぐに1錠内服してください。
2時間以上経過して吐いた場合は内服の必要はありません。

おおよそピルの血中濃度が最高値に達するのは、内服してから約2時間だとされています。
そのため2時間以内であれば内服、2時間以上であれば内服の必要はありません。

吐き気の症状があった場合、飲む時間を夜寝る前にする、ハーブティーを飲む、読書や好きな音楽を聴くなどして気分転換をはかることなど工夫するとよいでしょう。

つぎに不正出血です。

ピルの内服による不正出血なのか、ピルの休薬期間内の消退出血なのかを内服して第1週目なのか把握しておきましょう。

不正出血の場合、しだいに治まってきます。

もし長期間続く場合は、性交渉を避けて、ピルの服用による出血なのか、他の病気によるものなのか医師に相談しましょう。

そして血栓症です。

いわゆる静脈血栓症ですが、OC・LEPガイドラインでは、疼痛の種類の頭文字から「ACHES」と呼んでいます。

ACHESとは、A:abdominal pain激しい腹痛、C:chest pain激しい胸痛、呼吸困難、H:headache激しい頭痛、E:eye/speech problems視覚、言語、意識障害、S:sever leg pain ふくらはぎの痛み/熱感増加や皮膚の発赤の頭文字をとったものです。

もし副作用があったときどうすればいいのか?

HESの症状がないか注意しましょう。

もう少し具体的に解説すると、突然に起こる腹痛、吐き気、腹部膨満感、痛み止めを飲んでも治らない、長時間続くというものです。

胸痛や呼吸困難は、心筋梗塞、肺梗塞の症状です。突然に激しく胸が痛む、呼吸が苦しくなるという症状です。

頭痛は、いきなりバッドで殴られたような痛み、吐き気を伴う、場合によっては意識を失うことも。

ふくらはぎの痛みは、最近足が浮腫んでだるい、押したときに痛む、ふくらはぎ全体が赤く腫れてきたという症状です。

もしひとつでも症状があるようならすぐに服用を中止してかかりつけの医療機関、医師に相談しましょう。

また、静脈血栓症を予防するために、日本静脈学会によると積極的な運動、下肢の挙上やマッサージをすること、自動的および他動的な足関節運動を実施すること、いわゆる足首を積極的に自分で動かしたり人に動かしてもらったりすることを勧めています。

静脈のポンプ機能を維持することによって血液の流れが滞らないようにします。

このように血栓症は予防することができます。

もし、長時間同じ姿勢をとる場合は運動や下肢の挙上やマッサージ、定期的に足を動かしましょう。

参考文献:OC・LEPガイドライン2015
日本産科婦人科学会 ガイドライン2017 婦人科外来編
肺血栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン2017年版

まとめ

まとめ

ピルについて解説しました。

ピルは、一昔前までは日本にはあまり知られていない薬でした。
またピルを服用することは、避妊が必要な人が服用するものという印象が強く、日本への認可が諸外国と比較して遅れていたこともピルに対する印象を独特なものにしていたといえます。

ピルは、避妊効果を目的に服用される印象であったのが、今は避妊効果だけではなく、生理周期にともなう症状を軽くしたい、生理周期がバラバラなので整えたい、ライフイベントがあるので生理のタイミングを調節したいという理由で処方されることも増えてきました。

ピルが登場するまでは、女性のからだは生理周期にともなう様々な症状と向き合い、時にライフスタイルを限定せざるを得ないこともあったと思います。

女性の多様な生き方が尊重されている現代では、自分の生き方を自分で選択することは、女性が女性らしく生きることにつながります。

ピルは、女性が自分のからだを知り労わる手段の1つであるということを知っていただきたいです。

病院やクリニックに受診して処方してもらう薬でもありますが、今やオンライン処方にてピルを服用できる時代になりました。
それだけに副作用についても、知っておくことが自己責任となっています。

ピルはホルモン剤です。薬ですので、作用副作用をよく理解したうえで服用する。
そして服用した際の心配、不安なことがあれば、医師、薬剤師に相談しましょう。

女性が、自分のからだを知り、自分のからだや心を労り、幸せな人生を歩むことを願っています。

(星谷 富美子)