更年期障害は、どうして起こる?
- 【1】更年期障害とは?
- 【2】更年期障害を引き起こす要因
- 1. 女性のホルモンの変化
- 2. 心理的因子
- 3. 社会的因子など
- 【3】更年期症状を知ろう
- 【4】セルフケアのポイント
- まとめ
- 参考文献
中年時期の女性は、倦怠感、イライラ、物忘れなど悩む方も多いのではないでしょうか。
これは「更年期症状(ひどい場合には更年期障害)」といい、加齢にともなって女性の体が閉経に向かっている証拠です。
更年期を健やかに過ごすためにも、更年期症状と更年期障害について知っておきましょう。
ご自身の体調管理に活用し、心身のストレスを減らす生活習慣を身につけてくださいね。
【1】更年期障害とは?
女性のライフサイクルのうち、閉経(月経が12ヶ月以上来なくなる状態)をはさんだ50歳前後を「更年期」と言い、更年期は45歳から55歳までの時期を指すことが多いです。
更年期はおおよそ40~60歳の範囲でおさまると考えられています。
更年期に現れる症状のうち、持病など他の病気が原因ではないことが明らかな身体的・精神的な症状を「更年期症状」と呼びます。
「更年期障害」というのは、更年期症状が重く、日常生活に支障が出る場合を示します。
ただ、更年期障害は全員が経験するものではありません。
仕事や家事に弊害が出るほど重い症状に悩む人もいれば、ほぼ無症状で更年期を過ごす人もいます。
1. 女性のホルモンの変化
更年期におけるホルモンバランスの変化は、更年期症状の大きな原因です。
ホルモンは内分泌腺という特殊な組織でつくられおり、いわゆる「女性ホルモン」は、卵巣でつくられる卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類です。
月経時には、卵巣からエストロゲンとプロゲステロンが分泌されるので、子宮と乳房が刺激され、女性の体は受精の準備に入ります。
これらのホルモンは20歳から30歳代で分泌量がピークを迎え、40歳ごろから減っていきます。
更年期になるとエストロゲンの分泌量がぐんと減って、脳や卵巣と関連するホルモン物質がうまく機能しなくなり、自律神経などの不調を引き起こすのです。
女性ホルモンとよばれるエストロゲンとプロゲステロンの他にも、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)のように女性特有の体の機能と密接にかかわるホルモンがあります。
図2に全体像を示していますが、脳の視床下部から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモンによって、脳下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)が分泌されます。
FSHとLHは卵巣へはたらきかけ、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌を促します。
また、卵巣は女性ホルモンの分泌量を脳にフィードバックする機能をもっています。
脳にはたらきかけ、女性ホルモンが多いときは分泌を抑え、少ないときは多く分泌させるよう、ホルモンバランスを感知して視床下部に指令を出させます。
更年期になると卵巣の機能が低下し、エストロゲンの分泌量が減っていきます。
しかし、視床下部や下垂体から一方的にホルモンが分泌されることで、卵巣と脳とのホルモンバランスが崩れてしまい、さまざまな更年期症状があらわれます。
2. 心理的因子
女性が育ってきた環境、性格、日々のストレスも、抑うつや不安などを引き起こす要因の一つです。
更年期を経験する年齢には、夫婦間の問題、親の介護、遺産相続、病気や死亡など、これまで経験してこなかった問題に直面することが増えていきます。
これら一つ一つの課題を解決するうえで、女性は心理的な負担を抱えるようになり、更年期症状から更年期障害へ発展する人もいます。
【3】更年期症状を知ろう
更年期症状は一人ひとり異なりますが、おもに次の3タイプに分類されます。
血管運動系の症状
→ ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)、動悸・息切れ、寝汗、多汗、むくみなど
精神的な症状
→ 頭痛、めまい、イライラ感、倦怠感、脱力感、無気力、不安感、孤独感、情緒不安定、不眠、食欲不振など
その他の身体症状
→ 肩こり、腰痛、関節痛、筋肉痛、下腹痛、頭痛、耳鳴り、しびれ、吐き気、下痢、胃もたれ、頻尿、便秘、尿失禁、性交痛、皮膚の乾燥など
その他にも、環境やストレスなどによってあらゆる症状を呈します。
また、閉経までの過程や年齢には個人差があるので、「ある日突然、月経が来なくなった」という人もいれば、「月経の間隔がだんだんと開いて、量も減っていった」と段階をふむ人もいます。
【4】セルフケアのポイント
更年期は、体調が不安定だったり、外に出るのがおっくうになったりしがちです。
ここでは、ご自宅でも簡単に実践できるセルフケアについてご紹介します。
食事でケア
基本的には、一汁三菜の和食で栄養バランスを整えましょう。
特に効果的なのは、大豆や大豆加工食品です。大豆には良質なタンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維の他に、女性ホルモン様の大豆イソフラボンやエクオールなども含まれています。
豆腐、納豆、豆乳、大豆飲料などを組み合わせて、食事に取り入れると良いでしょう。
運動でケア
更年期症状の緩和やストレス解消には、軽い運動がおすすめです。
女性ホルモンには、月経時のホルモン調整だけでなく、脂肪の燃焼や骨を丈夫にする働きもあります。
そのため女性ホルモンの分泌量が減る更年期以降は、肥満、骨粗鬆症、生活習慣病などが出やすくなると言われています。これらを予防する意味でも運動はとても有用です。
大切なのは、楽しくコツコツ続けることです。
掃除などの家事やスーパーの買い出しなども運動になるので、少しでも体を動かすよう心がけましょう。
ただ、膝に負荷がかかるような激しい運動には注意が必要です。関節痛など痛みがある場合は、無理をしないでくださいね。
病院・クリニックでケア
病院やクリニックでは、女性ホルモンであるエストロゲンを補充する「HRT;Hormone Replacement Therapy」という治療法があります。
HRTは、世界の更年期医療のスタンダードとして先進国を中心に多くの女性に使用されています。
他には、漢方薬による体質改善があります。
ただ、漢方薬は体質や体型、症状などを総合的に判断して、症状に合わせてどの漢方薬を使うかが決まります。
漢方薬を服用して、体調に異変を感じた場合には、すぐに服用をやめて、医師や薬剤師に相談しましょう。
サプリメントや医薬品でケア
ドラッグストアなどの市販薬も、つらい更年期症状を軽減する一つの方法です。
更年期症状の度合いや体調を見ながら、用法・用量を守って服用することで、特定の症状改善が期待できます。
薬によっては食べ合わせ・飲み合わせに注意が必要なものもあるので、薬剤師に相談した上で購入しましょう。
まとめ
更年期症状には個人差があり、自覚症状やセルフケアは千差万別です。
抑うつや不安感が強い場合は、更年期障害と更年期うつ病との識別も重要です。
いつもとは違うな、と感じる体の不調が見られたら、まずは婦人科や更年期外来など専門医へ相談することをおすすめします。
(KOMEKO)
- 1. 東京女子医科大学産婦人科「女性ヘルスケア(更年期)」
[ https://www.twmu-obgy.com/medical/health.html ] - 2. 独立行政法人 国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター「〈おとな〉vol.06 更年期障害について」
[ https://shikoku-mc.hosp.go.jp/news/ohisama_basics_a_vol06.html ] - 3. MSDマニュアル「月経周期」最終査読/改訂年月 2016年 9月
[ https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/22-%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E7%94%9F%E6%AE%96%E5%99%A8%E7%B3%BB%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6/%E6%9C%88%E7%B5%8C%E5%91%A8%E6%9C%9F ] - 4. 一般社団法人日本内分泌学会「ホルモンについて」
[ http://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=3 ] - 5. 第一三共株式会社 くすりと健康の情報局「更年期障害の症状・原因」
[ https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/30_kounenki/ ] - 6. 宮上 景子ら「最近の更年期障害の管理」昭和学士会誌, 第77巻第4号
- 7. 大塚製薬「更年期も元気にすごそう」
[ https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/living-well-with-menopause/ ]