視力検査ってそもそも何なの?

眼科に行くと必ず受ける視力検査。

「どちらが開いていますか?」と聞かれ、「上、下、右、左」と見えたように答えているけれど、これ一体何を調べているの?と疑問に思ったことはありませんか?

また、以下のような視力検査にまつわる質問も患者さんからよく聞かれます。

  • 普段見えているから視力検査は必要ないのでは?
  • 何か月に一回視力検査をする必要があるの?
  • 何となくしか見えていないのに、視力検査で答えていいの?
  • 右目と左目で視力が違うことってあるの?
  • 視力が変わる原因は何?

今回は、誰もが一度は受けたことがある視力検査とその疑問について徹底解説いたします。

視力検査で調べていることはこの5つ

視力検査で調べていることはこの5つ

視力検査で調べていることは主に以下の5つです。

  • ・正視・遠視・近視・乱視度数
  • ・裸眼視力値
  • ・矯正視力値
  • ・矯正視力が1.0出るかどうか
  • ・前回の値との比較

これらの値をもとに、Dr.が疾患の程度を判定したり治療方針を決めるため、視力検査で得られた値はとても大切なデータとなります。

では、視力検査の手順を見ていきましょう。 視力検査は5mの距離で行います。

  • 1. オートレフラクトメーターで遠視・近視・乱視度数を測定する
  • 2. 裸眼視力を測る
  • 3. 1.で測定した値をもとに矯正視力を測る

この一連の検査の流れから、視力検査で知りたいことが全て分かります。

一つずつ見ていきます。

正視・遠視・近視・乱視度数

眼科に行くと、視力検査の前にオートレフラクトメーターという器械で、正視・遠視・近視・乱視度数を測定します。

オートレフラクトメーター

これらを屈折度数といいます。
目における、背の高い低いのような個性の一つですね。

矯正視力を測る際に選ぶ大体のレンズ度数を、この器械で知ることが出来ます。

気球の絵が見える器械を覗いたことはありませんか?
あの器械です。
気球がぼやけたり、はっきりしたりするのを見ることで屈折度数が測定されるのです

屈折度数の種類は以下になります。

  • ・正視
  • ・遠視
  • ・近視
  • ・正視+乱視
  • ・遠視+乱視
  • ・近視+乱視

屈折は人それぞれで千差万別で、これらの性質を数字で表します。

また、眼の疾患によって屈折度数が変化することもあるので、視力検査と合わせてとても大切な検査と言えます。

それでは、正視・遠視・近視・乱視の定義を見てみましょう。

正視

正視とは、網膜上で像を結ぶ状態、つまり屈折異常のない状態です。
裸眼の状態でくっきりはっきり物が見えるので、メガネは必要ありません。

遠視

遠視とは、網膜の後ろで像を結ぶ状態です。
目の奥行きが短い場合が多いです。

若いときはピント調節の力があるので、自分の調節力を使って網膜上にピントを合わせることが出来ます。

つまり遠視という屈折異常はあるけれど、ピント調節次第で、遠くも近くもメガネなしで見えるという状態です。

ただ、遠視度数が強い場合には、網膜上にピントを持ってくる強い力が必要になり、眼精疲労を起こしたり、メガネが必要になったりする場合があります。

遠視のメガネ矯正は、凸レンズ(プラスレンズ)で行います。
凸レンズは像を前に持ってくる性質があるので、メガネをかけることで楽に物が見えるようになります。

近視

近視とは、網膜の前で像を結ぶ状態です。
網膜より手前でピントを結ぶので、物をはっきり見るためには、焦点を後ろ方向にずらして網膜上に合わせなくてはいけません。近視のピント合わせは自力では出来ません。
つまり、手元は裸眼で見えるけれど、遠くはメガネがなければはっきり見えないという状態です。
また、近視の方は裸眼で手元にピントが合っているので、遠視の方より老眼を感じにくいという傾向にあります。

近視の矯正は、凹レンズで行います。
像を後ろに持っていく性質のあるレンズです。

乱視

乱視とは、角膜の縦方向と横方向のカーブの違いにより、像を結ぶポイントが2つ出来ている状態です。
ピントが合う位置が2ヶ所あるため、像がぶれて見えます。

乱視の矯正は、円柱レンズで行います。
2点ある焦点を、1点に重ね合わせる性質のあるレンズです。

これらの度数をそれぞれ調べることで、次に説明する矯正視力の測定時に使うレンズ度数を知ることが出来ます。

裸眼視力値

まず最初に測るのは、裸眼の視力です。片目ずつ測ります。
これは眼鏡をかけない状態で、目を細めずにどこまで見えるかを調べます。
目を細めることで、ピント合わせがある程度出来てしまうので、正確な裸眼視力が分からなくなってしまいます。
裸眼視力を答えるときは、目を細めずに答えましょう。

矯正視力値

矯正視力値とは、メガネをかけたときにどこまで見えるかの値です。こちらも片目ずつ測ります。
オートレフラクトメーターで測った屈折度数をもとに、遠視、近視、乱視のレンズを検査用メガネに入れて測ります。
最高視力が出るところまで、レンズを交換しながら応答を確認していきます。

矯正視力が1.0以上出るかどうか

視力検査で最も大切なことは、矯正視力が1.0以上出るかどうかということです。

視力検査で1.0以上ない場合、目の中のどこかの部分に異常があると推測され、さらに詳しい検査が追加されます。

この点からも、視力検査はとても大切な検査と言えるのです。

前回の値との比較

疾患の進行度や治療の効果を判定するために、前回受診時との比較対象として、視力値、屈折度数を参考にします。

来院ごとに視力を測定するのを嫌がる患者さんもいますが、疾患レベルの評価値として重要な指標となりますので、Dr.に指示された間隔で視力検査を受けるのは大切です。

視力の値を見てみよう

ランドルト環

視力検査をするときには、Cが色々な方向に向いたランドルト環という視標を使って検査します。

視力は以下の値で評価されます。

  • 光覚 光が分かる
  • 手動弁 手の動きが分かる
  • 指数弁 指の本数が見える
  • 0.01~2.0 見えているランドルト環の大きさによって表される

※視力0.01以下は、指数弁、手動弁、光覚の3つのレベルで判定されます。

学校の視力検査の段階を見てみましょう。
B以下は眼科受診が必要になります。

  • A(1.0以上)1番後ろの席から黒板の字が良く見える。
  • B(0.7~0.9)後ろの席から黒板の字が大体見えるが、近視が始まっている可能性がある。
  • C(0.3~0.6)後ろの席からは黒板が見えない。眼鏡をかける必要が出てくる。
  • D(0.3未満)前の席からでも黒板が見えにくい。すぐに眼鏡をかける必要がある。

学校で視力測定をした場合、視力値が不正確なことがあり、眼科で測ると異常がなかったということもあります。

ただ、普段見えにくそうにしていなくても、視力を測ってみたら実は見えていなかったということもあるので、学校検診はスクリーニングとしてとても大切です。

学校で用紙をもらったら、早めに眼科を受診し、必要に応じてメガネをかけることも選択肢に入れましょう。

矯正視力が1.0出ない場合に疑われること

矯正視力が1.0出ない場合に疑われること

遠視、近視、乱視の度数をもとに矯正視力を測った際に、1.0以上出ない場合は、目の奥に異常があると推測されます。

つまり、レンズの力を借りて網膜上に光を到達させようとしても、目の奥にある疾患が邪魔をして光が到達せずに、視力が出ないということです。

また、子どもさんの場合は屈折度数と視力を照らし合わせ、弱視を疑う場合もあります。 つまり屈折度数にもとづいたレンズを入れても、機能的に発達していないため、視力が出ない場合があります。

遠視・近視・乱視度数が強すぎたり、左右で屈折度数に差がある場合や、斜視(視線のずれ)がある場合などに弱視が起こることがあります。

目の奥の疾患にしろ、弱視にしろ、矯正視力が1.0以上出ないのは問題ですので、何かしらの治療が必要になります。

視力を指標にして経過を見ること

視力を指標にして経過を見ること

視力の値を指標にして、疾患の経過や治療効果の判定を見ます。

例えば1ヶ月ごとの検診で、前回に比べて視力が低下している場合には、目の奥の疾患が進行したことが疑われます。

また、目の治療を行っている過程で、1ヶ月前に比べて視力が上昇している場合には、治療効果が出ていると判定されます。

よって、疾患や治療の評価のために視力を測定することは、とても重要なことなのです。

視力検査 Q&A

視力検査 Q&A

眼科で患者さんによく聞かれる、視力検査についての質問をまとめてみました。

普段見えているから視力検査は必要ないのでは?

「見えているから視力検査はしたくない。」
このように言う患者さんは多いです。
しかし、普段は両目で物を見ていますので、片目の視力が低下していることに気が付かない場合があります。
実際に測ってみたら視力が下がっていたということもありますので、Dr.の指示の間隔に合わせて視力検査を受けることは大切です。

何ヶ月に一回視力検査をする必要があるの?

「また今日も視力検査するの?」と言う患者さんも多いです。
視力検査の頻度は、Dr.からの疾患に合わせた指示に基づくものであり、患者さんによって視力検査の間隔は違います。
毎月検査する人もいれば、3ヶ月に1回、半年に1回、1年に1回、視力の異常を感じたとき適宜、など様々です。

何となくしか見えていなくても答えていいの?

視力検査の時、「はっきり分からないけど何となく見えているものを答えてもいいの?」と思うことはありませんか? 何となく、で答えてOKです。 視力検査の値として、何となく見えていても正答した場合は「見えている」と判定されます。

右目と左目で視力が違うことってあるの?

左右の目で視力が違うことはよくあることです。
視力だけではなく、屈折の度数が違うことも同様にです。
右と左の目は別物ですので、それぞれの目を大切にする必要があります。

視力が変わる原因は何?

視力が変わる原因は何なのでしょうか。

子どもさんなら、成長に伴う近視の進行、大人なら目の中の疾患の変化による視力変化もあります。

特に糖尿病の人に多いのが、血糖値によって屈折の変動が大きくなることです。数日間の内に屈折が変わってしまい、今かけている自分の眼鏡が全く見えなくなり、驚いて受診する患者さんもいます。

また、裸眼視力は、お天気や体調の変化によっても変動することがあります。
裸眼視力が前回より悪いことを気にする患者さんは多いですが、気にすべきはメガネをかけたときの視力つまり矯正視力の方です。裸眼視力の変動においては、あまり神経質にならなくて大丈夫です。

まとめ

まとめ

視力検査とは何かについて解説しました。
視力検査で調べていることは主に以下の5つでした。

  • ・正視・遠視・近視・乱視度数
  • ・裸眼視力値
  • ・矯正視力値
  • ・矯正視力が1.0出るかどうか
  • ・前回の値との比較

これらの値を元に、Dr.は疾患の程度や治療効果の判定などを行います。
またお子さんにおいては、弱視になっていないかの判定の最も重要な指標です。

ただ何となく受けている人が多い視力検査ですが、目においてはとても大切な検査なのです。

視力検査の意味を知り、必要な場合は適切な治療を受けて下さいね。

(藤川 真紀)