高血圧のお薬を飲んでいる方へ「お薬きちんと飲めていますか? 」

高血圧のお薬、ついつい飲み忘れていませんか? 危険な病気になるのを防ぐためにも、毎日きちんと飲むようにしましょう。

病院で血圧が高いことを指摘され、処方された高血圧のお薬。
「毎日ちゃんと飲んでくださいね」と医師や薬剤師から説明されたものの、ついつい飲み忘れてしまっていませんか?

「朝は忙しくて…」「飲み忘れても体調は変わらないし…」と思っていたら、手元には大量に余ったお薬が。
そして、次の受診日でさらにお薬を処方されて…思い当たる方もいらっしゃるかと思います。

確かに、高血圧のお薬は飲み忘れてもその時の体調はほとんど変わりません。
しかし、一度の飲み忘れをきっかけに、薬を飲まない日が続き、重大な病気が引き起こされることがあります。

そこで今回は、高血圧のお薬の効果や、飲み忘れるリスク、飲み忘れないために工夫できることについて紹介します。
今回の内容を正しく理解して、きちんと血圧をコントロールしていきましょう。

【1】高血圧とは

日本は高血圧患者が多い
高血圧は、日本では4300万人ともっとも患者数の多い生活習慣病です。
「平成26年国民健康・栄養調査」によれば、75歳以上の高血圧患者の割合は、男性74%、女性70%といわれており、年齢を重ねるとともに身近な病気になるといえます。

高血圧の原因ってなに?
日本人の高血圧の多くは、遺伝的素因(体質)や食塩の過剰摂取、肥満などが原因とされています。
従って、食生活を中心として生活習慣の修正が予防・治療にきわめて重要です。

高血圧の値~上の血圧と下の血圧とは?~
病院で、血圧の検査結果が返ってきた時に、「上の血圧が140mmHg以上、または下の血圧が90mmHg以上だと高血圧ですよ。」と説明を受けたことはありませんか。
上の血圧(収縮期血圧)とは、心臓が収縮して全身に血液を送る際に、血管にかかるもっとも強い圧力をいいます。

一方、下の血圧(拡張期血圧)とは、全身から血液が戻ってきて心臓が拡張している際に、血管にかかる圧力の値をいいます。

例えば高齢になると、動脈が固くなりやすく、ふくらみにくくなるため、上の血圧の値は増加し、下の血圧の値はむしろ低下することがしばしばみられます。

高血圧を放っておくとどうなるの?
高血圧の状態が続くと、血管が硬く狭くなり(動脈硬化)、血液の流れが悪くなったり、血栓(血液の塊)ができやすくなったりします。 この状態が、脳や心臓、腎臓の血管で起きて重大な病気(合併症)になるリスクが高まります。

例えば、脳卒中や心筋梗塞は、ひとたび発作が起こると、緊急に治療が必要となる危険な病気です。
それ以外の合併症においても重大な病気で、高血圧は、そのもととなる状態です。
だからこそ、普段からきちんと血圧のコントロールをしておく必要があります。

高血圧による合併症
臓器合併症
心臓脳梗塞、脳出血、くも膜下出血
心肥大、狭心症、心筋梗塞、心不全、心房細動
大動脈解離、閉塞性動脈硬化症
腎臓腎障害、腎不全
高血圧による合併症

高血圧の症状はほとんどない?
高血圧は、ほとんど自覚できる症状がありません。分かりづらい症状ですが、肩こりや頭重感、めまい、動悸、息切れなどが見られることがあります。

従って、数値の上では高血圧であっても、目立った自覚症状がなく、治療をせずに放置してしまい、知らないうちに脳や心臓の血管が動脈硬化を起こし、腎臓のはたらきが悪くなっていることもあります。
症状が分かりづらいですが、油断せずに普段から定期健診での血圧測定では注意するようにしましょう。

このように、高血圧は症状がほとんどないため、治療に対してついつい油断しがちです。
しかし、危険な病気につながるリスクがあります。
従って、血圧をコントロールするための生活習慣の改善や、高血圧のお薬による治療が大切になってきます。

では、次に高血圧のお薬の効果や、飲む上での注意点について解説します。

【2】お薬をきちんと飲んで、血圧をコントロールしよう

血圧を下げるためには、まずは食生活を見直したり、運動をしたりと生活習慣を改善することが重要です。
ただし、それでもなかなか血圧が目標まで下がらない場合には、お薬による治療を行います。

高血圧のお薬(降圧薬)の効果
高血圧のお薬(降圧薬)には様々な種類があり、患者さんの血圧の数値や全身状態、その他の病気の有無などをみて、最適な薬が処方されます。
また、十分に血圧を下げるためには、いくつかのお薬を組み合わせる場合もありますが、最近では患者さんの負担を少なくするために、2種類以上の成分を組み合わせた配合剤もできてきました。

薬の飲み方については、一日に飲む薬の量や、時間帯は患者さんによって様々です。
自分が飲むお薬について、医師の説明をしっかりと聞くようにしましょう。

おもな降圧薬

高血圧のお薬の副作用
どんなお薬にも、病気やけがを治す働きがある一方で、副作用という望ましくない症状を引きおこすことがあります。
この副作用が不安で、薬を飲むことに抵抗がある方もいらっしゃるかと思います。

高血圧のお薬は、多くの方が長期にわたって内服するため、安全面でとくに優れたものが選ばれています。

一方で、副作用の1つに、血圧が下がりすぎて生じる「めまいや立ちくらみ」があります。
この副作用の原因のひとつに、病院ではいつもより緊張して血圧が高く測定されたため、必要以上の降圧薬が処方されることがあげられます。
その他にも、かゆみや蕁麻疹などのいつもと違うアレルギー症状が現れることもあります。

これらの副作用は、医師に相談してお薬の種類を変更したり、量を調節したりすることで、対処が可能です。
気になる方は、速やかに医師や薬剤師に相談しましょう。

副作用を考えると、薬を飲むのが怖くなる気持ちも分かります。
しかし本当に怖いのは、高血圧を放置して起きる脳卒中などの重大な病気です。

あなたに合うお薬がきっとあります。
医師に相談しながらきちんとお薬を飲んで治療を進めましょう。

【3】飲み忘れると、脳卒中や心筋梗塞につながることも

飲み忘れによる救急搬送の事例
実際に、一度の飲み忘れをきっかけに、薬を飲まないことが多くなり、救急搬送されたというケースは多くあります。

飲み忘れによる救急搬送の事例

例えば、高血圧の状態が続き、脳出血が起きて救急搬送された事例を紹介します。
脳出血は、適切に治療をしても、脳の細胞にダメージが生じて後遺症が残ることが多いです。
言葉を発しにくくなったり、手足がうまく動かせなくなったりと、酷い方では介護がないと生活ができない状態になることもあります。

このように致命的な状態にならないためにも、医師の指示通りにきちんとお薬を飲むようにしましょう。

飲み忘れの繰り返しも要注意

飲み忘れの繰り返しも要注意
薬を飲んだり飲まなかったりと、飲み忘れることを繰り返しているという方も、注意が必要です。
飲み忘れの繰りかえしにより、血圧が大きく上がったり下がったりを繰りかえすと、血管にダメージが生じてしまいます。
従って、できるだけ薬を飲み忘れないようにして、継続的に飲むようにしましょう。

このように高血圧は、現在症状がほとんどなくても、危険な病気につながっています。
ただ、分かってはいても、高血圧の治療は、定期的かつ長期的な通院と服薬が必要であるため、ついつい飲み忘れてしまう方もいらっしゃるかと思います。

そのような方に向けて、次に飲み忘れ対策の方法についてご紹介します。
きちんと飲み続けるための工夫を、できることから始めましょう。

【4】きちんと飲み続けるために、これからできること

お薬を飲み忘れないように意識はしていても、ついつい忘れてしまうことがありますよね。
飲み忘れるのを防ぐために、現在では様々な便利グッズがあります。
これらを活用し、お薬をきちんと飲み続ける習慣を身につけましょう。

スマートフォンのアプリ
毎日決まった時間にアラームで、薬を飲むタイミングを知らせてくれます。
また、そうした知らせるリマインダー機能だけでなく、血圧や血糖値、体重などの記録もでき、健康管理も可能です。
飲み忘れが多い方にとっては、毎回スマートフォンが飲むべきタイミングを教えてくれるとなると、とても安心ですね。

スマートフォンのアプリ

お薬手帳やカレンダーを活用
薬局でもらうお薬手帳やカレンダーに記録することで、毎日の服用状態を視覚的に確認できます。
お薬手帳であれば、通院時に持参して、医師や薬剤師に、薬がきちんと飲めているかを確認してもらえるため、とても便利です。

お薬手帳やカレンダーを活用

ピルケース
一日ごとや飲むタイミングごとで仕切られた薬のケースです。
100円ショップなどで手に入れられます。
ピルケースを見れば、その日に飲む薬が一目瞭然ですので、とても分かりやすいです。

ピルケース

分包する
薬を飲むタイミングごとに、ビニールで分包する方法です。
薬局で頼むと分包してもらえます。
何種類も飲む薬がある方は、薬の取り違えも防ぐことができますし、手先が不自由な方にとっては、薬を出す負担を減らすことができます。

分包する

2種類飲んでいる場合、1剤にまとめた配合剤に変更してもらう
一日に何錠も薬を飲むのは大変です。
医師に相談して、配合剤に変更することにより、薬の数を減らせる可能性があります。

【5】まとめ

高血圧はとても身近な生活習慣病であり、自覚症状がほとんどないことが特徴です。
しかし、放置しておくと危険な病気につながる可能性があります。

治療するためには、生活習慣の改善以外にもお薬をきちんと飲むことが大切です。
しかし、ついつい飲み忘れてしまうこともあると思います。

今回ご紹介した、お薬を飲み忘れないための工夫を取り入れながら、血圧をきちんとコントロールしていきましょう。

(見元 美佐)

参考文献
  • 厚生労働省「平成26年国民健康・栄養調査」2014年
  • 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」2019年
  • 日本高血圧学会「高血圧の話(一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子)」2019年