コロナに立ち向かう医療スタッフの大変さをわかってください ~いま1人ひとりができること~

私たちの生活は、コロナウイルス感染拡大により、一変しました。
毎日のようにニュースでは、コロナウイルス新規感染者数が報道されています。未だ終息の目処は立たず、先の見えない状態です。
感染をすれば死ぬ可能性のある感染症は、本当に怖いです。そのような中でも医療スタッフは、懸命に患者さんの対応を行っています。
感染者の対応をする医療スタッフは、様々な想いがあるでしょう。
医療スタッフの過酷な現状をお知らせしたいと思います。
そのなかで、1人ひとりができる行動についてもお話したいと思います。

医療スタッフの現状について

コロナウイルス感染拡大に伴う医療の現場の大変な状況を踏まえて、医療スタッフの様子について、項目ごとに伝えていきます。

・感染対策による業務量の変化と増加
新型コロナウイルス感染症の特徴として、感染力が極めて高いとういことがあげられます。さらに感染をしたら重症化するリスクも高いと言われています。
医師、看護師などの医療従事者自らが感染しない、させないためには「予防対策」が必須です。
コロナウイルス感染拡大に伴い、感染予防対策の徹底が必要となりました。
病院における外来診療と入院病棟での、感染対策や業務についてお話していきます。

外来診療

・すべての来院者に対し、入り口前で検温と手指消毒をしてから院内へ案内をします。
体温計は、非接触型へ切り替え対応しています。
・発熱のある来院者に対しては、病院のマニュアルに基づき対応します。
問診や状態などからコロナウイルス感染のリスクが高い方に対しては、病院内にある発熱外来に誘導、もしくは近隣の保健所への診察を促すことになります。
・各診療科の外来受付や会計窓口など患者さんとの対応するカウンターには、飛沫防止に透明のビニールシートを設置しました。
受付では、ビニールシート越しで患者さんと対応しています。
・診察室にも透明のビニールシートを設置しました。
医師と患者さんの間隔を空け、ビニールシート越しに診療をしています。
・外来待合室の患者さんが、密接・密集して待ち時間を過ごしていないか、確認をします。
外来診療に携わるスタッフは、マスクとフェイスシールド、手袋の着用が必要になります。
処置時は、ガウンを着用します。

入院病棟

・ナースステーションの受付カウンターも、飛沫防止に透明のビニールシートを設置しました。
ビニールシート越しで対応するようにしています。
・看護師は、マスクとフェイスシールドそして手袋とガウンの着用が義務付けられました。
手袋とガウンは、処置ごとに変えます。
・退院した患者さんのベッドの消毒剤を用いた清掃をします。
・入院患者さんへの面会が禁止されました。
着替えや荷物などは、ナースステーションで預かっています。
面会禁止により、家族や知人と接することができないため、苦痛を生じている患者さんもいます。また、治療などの援助に家族の支援が受けられないことが、患者さんも医療スタッフも苦痛を感じています。
一方、zoom面会を取り入れている病棟もあります。
家族や知人が待合室からiPadを使用し、病室にいる患者さんとリモート面会するなど工夫をしています。

入院病棟

図1のように、ガウン・マスク・手袋を着用して業務をしています。
マスクは2種類あり、不織布マスクとN95マスクの違いについて説明します。

不織布マスク
「不織布」の意味は、織っていない布のことです。
熱的、機械的、科学的作用により繊維を接着またはからみ合わせた薄いシートでできたマスクです。
通気性に優れている特徴があります。

N95マスク
空気感染源を捕集し、着用者の呼吸器感染のリスクを低減します。コロナウイルスの感染防止にも使用可能なマスクです。
肌に密着させて着用するので、息苦しさを感じます。

感染対策

病院全体としての感染対策についてお話していきます。
・患者さんも含めすべての方にマスクの着用と手洗いの徹底をしています。
・今まで、病院内の環境整備(いわゆる、お掃除と消毒です)は看護助手が中心に行っていました。
現在は、1日2回朝と夕に看護師も消毒剤を用いて、病院内の環境整備を行っています。
廊下の手すりやベッドと周囲、床頭台、カウンター、待合室、談話室など色んな方が触れるところの拭き掃除を隅々まで念入りに行います。
・1処置、1手洗いの徹底をしています。
・定期的に換気をします。
・待合室や談話室などは密集を避けるために、椅子などの配置を変えました。
また、クリアパネルを立てるなどして食事中の飛沫防止対策も行っています。
・医療スタッフの休憩室での密集を予防しています。
休憩時間が重ならないよう配慮するのと、休憩室では対面にならないように配置しています。
食事も1人で食べて、濃厚接触にならないような指導がされています。
これは全て病院からクラスターを発生させないための努力です。

医療スタッフは、感染予防に関する業務量が増加しました。
特に、環境整備に対する業務の増加が目立ちます。ガウンと手袋を着用しつつ処置を行うのは、暑さや蒸れを生じるし、体力も消耗するので辛いです。
当然これまでにない業務が増えるわけですから、コロナウイルス感染拡大後、残業が増加したという医療機関も見られます。

・医療スタッフにかかる精神的な負荷
患者さんの対応をしている医療スタッフは、精神的な負担が大きいです。
「自分がコロナに感染するのではないか」
「自分から周囲に感染させてしまうのではないか」
医療スタッフの顕著な気持ちが表れています。このような状態から、
・不安
・抑うつ(気分の落ち込み)
・不眠
といった症状が医療スタッフに見られています。なかには、不安の軽減のために飲酒量が増え、不眠を引き起こしている方もいます。

更には、「燃え尽き症候群」から、休職もしくは退職に至る医療スタッフもいるのが現状です。
燃え尽き症候群のリスクが高いのは、男性よりも女性で尚且つ看護師が多いというデーダーも出ています。

※燃え尽き症候群(別名 バーンアウト)とは、それまで精力的に仕事に打ち込んでいた人が、まるで燃え尽きてしまったかのように仕事への情熱や意欲を失ってしまうことです。

・報われない待遇面
コロナウイルスの感染拡大の影響で、医療機関に受診する患者さんが減少しました。
その背景には、医療機関に足を運ぶことによる感染を未然に防止していることが考えられます。
社会全体として医療機関の受診は、必要最低限にしている傾向がみられるでしょう。
病院によっては、コロナウイルス感染患者の入院を受け入れることで、他疾患の患者さんの入院が制限されていることもあります。
それらのことが及ぼす医療スタッフへの影響についてお話していきます。

収入

医療機関は、患者さんが外来診療または入院を受け入れないと、報酬は確保できません。
患者さんの受診や入院が減少すると、収入源も減少します。よって、医療機関で働いているスタッフの給料などにも影響がでます。
なかには、給与とボーナスが減額された医療機関もあります。経営難で、今後の見通しが立たない医療機関も出てきました。

仕事上、危険や危害が起こる可能性が高い職場は、「危険手当」が付くこともあります。手術室や精神科、放射線科、結核病棟などが一般的です。
月額にすると、平均1万円程度支給されます。
しかし、コロナウイルス感染患者が入院している病棟は、危険手当が付いてない職場が多いとされています。
変革に制度が追い付かないのですね。

日々医療スタッフは、コロナウイルス感染患者の対応をし、疲労困憊な状態なのにも関わらず、給料も減額され、モチベーションの維持が出来ません。
危険な業務をしているので、給料やボーナスなど増やして欲しいところです。
この状況がいつまで続くか分からいと思うと、自分の生活費にも影響が出ることも予測されます。

・離職者の増加による人手不足
今までお話してきましたが、コロナウイルス感染拡大に伴い、医療スタッフの業務量は増加、精神的な負担が生じ、給料面などの待遇は報われていません。
その結果、医療スタッフの体調不良による休職者や退職者が出現し、増加しています。
新卒の医療スタッフを採用しても辞退されてしまうケースさえあります。
新規入職者の見込みも分からない状態です。
現状の医療スタッフの中で、業務をしています。業務量が増え残業もあり、現場は「猫の手も借りたい」といった状況です。

・医療スタッフに対する誹謗中傷
医療スタッフ、その家族に対する偏見や差別が様々な場面で起きています。
その背景には、医療スタッフのコロナウイルス感染リスクが高いこともひとつの要因です。
その例について挙げていきます。
・保育園に子供を預けることを拒否された
・配偶者が感染症病棟で勤務していることから出社停止
・入店拒否やタクシー乗車拒否
・SNS上での誹謗中傷やデマの拡散
・医療機関に勤務していることを検索
医療スタッフは、コロナウイルスに感染しているとは限りません。「自分も感染するのではないか」という不安と恐怖の中で、患者さんへの対応をしています。

「どうか皆さん、医療スタッフに対する誹謗中傷はやめましょう。相手の立場を考えて下さい。そして、医療スタッフを励ましねぎらって欲しいです」

1人ひとりができる行動について

コロナウイルス感染拡大を防止し終息させるには、「感染予防」が重要ポイントとなります。
コロナウイルスは、人から人へ感染するウイルスです。
1人ひとりの感染予防の行動が、感染拡大の防止に繋がります。

※今一度、3蜜(密集・密閉・密接)を避け、手洗い・うがいの実施をしているか確認しましょう。そして、不要不急の外出を避けましょう。

それに加えて、免疫力の低下は感染しやすくなるので、日頃から十分な栄養と睡眠をとることも大事です。

「自分の大切な人がコロナウイルス感染したらどう思うのか?そして尊い命を絶ったらどういう気持ちになるだろう?」そのことを考え、1人ひとりが適切な行動をして頂きたいです。

医療の現場では、コロナウイルス感染患者の対応をしている医療スタッフがいます。
医療スタッフやその家族に対して、「差別」や「偏見」はやめましょう。
過酷な労働条件の中でも懸命に対応をしています。
医療スタッフが減少すると、「医療崩壊が急速に進み、本来受けられるはずの医療が当然のように受けられなくなり、重症者や死亡者が増える」ことに繋がります。

邁進する医療スタッフには、ぜひ支援をし、手を差し伸べて欲しいです。
医療現場の現状を改善する橋渡しの役目になって頂けたらと思います。
コロナウイルスの感染拡大を防止し終息するには、社会全体で取り組むことが必要です。
この世界的な非常事態に対応するには、1人ひとりの行動が大切な役目となります。

まとめ

コロナウイルス感染拡大によって、医療現場で働くスタッフは大変な思いをしています。
感染の拡大防止と終息には、1人ひとりの感染予防が大切です。
この機会にもう1度、自分の行動について振り返りをして欲しいです。そして、過酷な現場で懸命に働く医療スタッフを皆さんで支援していただければ幸いです。

(岡野 恭子)

参考サイト
  • コロナで疲弊 相次ぐ離職者 看護師たちが本音で語る医療現場の実情
    [ https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20201224.html ]
  • 「子供がいじめに」浮き彫りになる医療従事者や家族への偏見
    [ https://www.ntv.co.jp/news_covid19/static/20200514_c02.html ]
  • 重度の燃え尽き症候群は51%との結果も…新型コロナ感染拡大で医療者が抱える過酷さ
    [ https://news.yahoo.co.jp/byline/shigemidaisuke/20201228-00214782/ ]
  • 新型コロナの診療に関わる医療従事者の精神的な負荷について
    [ https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20201128-00209958/ ]